「選ばれし者の迷い道」

修は、いつものように仕事帰りに夕暮れの道を歩いていた。
薄暗くなり始めた空の下、彼の心には少しの疲れを感じていた。
道の脇には、田んぼが広がり、静かな環境が彼を包み込んでいる。
その日は何も特別ではなかった。
しかし、いつも通る道沿いで、彼は一つの宮を見つけることになる。

その宮は、古びた木材で作られ、苔むした石段があった。
普段は無視して通り過ぎる場所だったが、何となく彼の足はその宮へ向かっていた。
階段を上り、神社の境内に入ると、静寂が彼を迎えた。
周囲の空気が何か変わったように感じ、背筋がぞくりとした。

修が立ちすくんでいると、風が吹き抜けた。
その瞬間、彼はぼんやりとした声を聞いた。
「私を呼び覚ます者よ、何を求める?」思わず振り返ると、誰もいない。
彼はその声が自分の心の中から響いているのかと思った。
少し不安になるが、好奇心に駆られ、彼は口を開いた。
「何も…、ただ訪れたかっただけです。」

すると再び、声が返ってきた。
「私を呼び覚まし、ここに来たのか。お前には、運命の選択が待っている。」その言葉が修の心に重くのしかかり、彼は一瞬動揺した。
宮の中に入ることを躊躇うが、何か引き寄せられるように、彼は中へ進んだ。

宮の内部は薄暗く、かすかに見える明かりが独特の雰囲気を醸し出していた。
修は、祭壇の上に置かれた古い巻物に目を留める。
近づくと、その巻物には古代文字がびっしりと書かれていた。
「これは…何だ?」彼はその巻物に手を伸ばし、触れた瞬間、何かが彼の中で目覚めたような感覚を覚えた。

その瞬間、彼の体が震え、一瞬の間に視界が変わった。
暗い道が延々と続き、道の両脇にはぼんやりとした影が立っていた。
彼は恐怖に駆られたが、身動きが取れない。
「お前が選ばれた者だ、迷いの道を進むがよい。」声が再び響く。
修は影の中で何かが彼を見ているのを感じ、思わず目を閉じた。

次の瞬間、彼は宮の外に立っていた。
手にした巻物は消えており、辺りには何もなかった。
だが、道の向こうに見える景色はどこか異様で、まるで彼の周囲に何かが渦巻いているかのように感じた。
再びその声が響いた。
「お前の選択が、未来を決定づける。さあ、選ぶがよい。」

恐怖に押し潰されそうになりながらも、修は心の中で何かを決意する。
「私は…自分の人生を歩みたい。」そのとたん、道の風景が変わり、彼を取り巻く影も消えていった。
彼はそのまま逃げるように道を進んでいった。
明るい日差しが差し込む元の道に戻った時、安心感が心を包み込む。

その後、修は時折、あの宮のことを思い出す。
しかし、彼はその経験を心の奥に隠し、自分の道をしっかりと歩み続けた。
宮での出来事は、彼にとっての一つの選択肢であり、運命の流れを変えるきっかけであった。
それ以来、彼には迷わない自信が芽生えたが、あの古びた宮のことはいつも心の片隅に残り続けていた。
影に揺れる道を歩むことで、彼は自らの人生を築いていくのだと。

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