原は広大な自然に包まれた場所だった。
青々とした草木と静寂な空間が広がり、訪れる人々を無に帰すような神秘的な雰囲気を持っていた。
しかし、この地には古くから語り継がれる恐ろしい伝説があった。
「原の亡霊」と呼ばれる存在のことだ。
この霊は、かつてこの地で無惨な死を遂げた者の怨念が集まって生まれたと言われており、特定の条件が揃うと現れるという。
主人公の佐藤健一は、大学の仲間たちと共に原登山に挑もうとしていた。
皆でキャンプをし、星空の元で過ごすことを楽しみにしていた彼らは、未来に夢を馳せていた。
しかし、高揚感に浸る彼の心には不安があった。
なぜなら、健一の友人である大森たかしが、原にまつわる恐ろしい話を最近したからだ。
「原には亡霊がいる。見つけたら、絶対に目を逸らすなよ。でも、もし向こうから目が合っちまったら、魂を引きずり込まれるって聞いたぜ」と、たかしは半笑いで言った。
周りは楽しそうに笑い合ったが、健一はその言葉が頭から離れなかった。
そんな不安を抱えつつ、健一たちは原に到着した。
貸し切りのキャンプ場は、美しい自然に囲まれていた。
しかし、日が沈むにつれて、周囲は次第に暗くなり、静けさが深まり始めた。
その時、ふと背後から足音が聞こえた。
しかし、誰もいない。
不安に包まれた健一は、それでも仲間たちと楽しい時間を続けようとした。
しかし、夜が更けるにつれ、遠くから微かな声が聞こえてきた。
「助けて……」その声は、誰かの叫び声のようだった。
健一はその声に引き寄せられるように、友人たちを引き連れて声の方へ向かえば、原の奥深くへ進んでいた。
彼らは声の主を探し続けたが、やがて目の前に立つ巨大な木の前にたどり着いた。
その時、健一はなんとなく心臓が速く打ち始めた。
その瞬間、木の根元に目を凝らすと、暗闇の中から白い人影が現れた。
彼女の顔は灰色で、目は虚ろだった。
まさに、「原の亡霊」がそこにいた。
「助けて……」「私はここで死んだ……」彼女の声は低く響き、その言葉は気味が悪くも、何か哀しさを帯びていた。
友人たちは恐怖に凍りつくが、健一はその声に魅了されてしまった。
彼には何かこの亡霊の求めるものがわかる気がした。
その時、亡霊は唐突に彼の目を見つめ、叫んだ。
「あなたは……私の代わりに呪いを背負うの?」その瞬間、健一は彼女が求めるものが何かを理解した。
亡霊は自分の過去を誰かに託けられたくて仕方がなかったのだ。
意識が上へと引き上げられる感覚が訪れた。
原の空間が遠く、冷たく感じる。
彼は決心した。
「いいえ、私は逃げない!」彼の言葉は、亡霊の目を見つめ返すことで、彼の魂を揺さぶった。
その時、亡霊の表情が変わり、恐怖が和らいだ。
「できるのね……」彼女は静かに微笑み、そして消えていった。
原の空間は重たく、静けさが戻り、健一の心臓はようやく落ち着いた。
仲間たちも近くに戻ってきたが、彼には新たな使命が芽生えていた。
彼は、亡霊の過去を知る旅に出ることを決めた。
原での遭遇をきっかけに、彼は「暴」の世界と向き合い、自らの成長を遂げることで、亡霊の魂を解放する手助けをすることに決めた。
その夜、原は再び静寂に包まれ、健一の心には、新たな未来が灯っていた。