ある冬の深夜、静まり返った街の片隅に存在する古びた神社が、ひっそりと佇んでいた。
周囲は雪に覆われ、月明かりが神社の鳥居を照らし出す。
どこか異様な雰囲気を放つその神社には、地元の人々によって語り継がれてきた、恐ろしい伝説があった。
その神社には「己の罪が見える」という不思議な現象が起こると言われていた。
罪深い人がその神社に足を運ぶと、彼らの抱える罪が可視化され、否応なく直面させられるのだ。
誰もが一度試みようとするが、実際に足を運ぶ者は非常に少ない。
だが、探究心旺盛な大学生の健一は、そんな神社に興味を抱いていた。
友人の真理と一緒に、夜遅く神社を訪れることにした。
真理は最初は不安がる様子を見せたが、健一の「大丈夫、何も起こらないさ」という言葉に安心し、同行することになった。
二人は神社に到着し、静かに鳥居をくぐった。
周囲は真っ暗で静寂が支配していた。
健一は「ここで何が起こるんだろう?」と楽しそうに言い、真理は「本当に大丈夫かな…」と心配そうに目を泳がせていた。
神社の中に入り、健一は賽銭を投げ入れた。
「これから俺たちがどうなるか教えてくれ」と無邪気に願った。
すると、霧のようなかすかな光が現れ、二人の前に立ち現れた。
「あれは…?」と真理が呟くと、その光の中に一人の女性の姿が浮かび上がった。
彼女は悲しげな顔をしており、目がどこか虚ろな様子だった。
健一はその女性が、自分たちに何かを伝えようとしていると感じた。
「あなたたちは、己の罪に向き合う覚悟がありますか?」と女性は微かに声を発した。
健一は興奮しつつも少し怖くなり、真理は恐怖で震えていた。
彼女は自分の心の中にある罪を思い出し、思わず涙をこぼした。
次の瞬間、神社の周囲が暗くなり、二人はそれぞれ異なる visions を目の前に見せられた。
健一は幼少期の自分が飼っていたペットの猫を無視してしまった時の光景が映し出された。
彼はその猫が道でひかれてしまい、後悔に苛まれた。
目の前で死んでいく猫の姿が、彼を突き刺していた。
一方、真理は彼女が友達に対して冷たく接した記憶が蘇った。
彼女は友人の苦しみを知りながら無視し続け、その友人が最終的に孤独に耐えられなくなってしまった姿を目にした。
真理の心は痛みでいっぱいになり、涙が止まらなかった。
「もう嫌だ、離してくれ!」と叫ぶ真理の声が響くが、女性の姿は消えず、現実と幻想が交錯する中、健一と真理は己の罪と向き合うことを強要され続けた。
二人は耐えられなくなり、神社を飛び出すことに決めたが、出口はどこかに消えてしまったかのように見えた。
恐怖と痛みが心を締め付け、二人の絆は試されることになった。
健一は「真理、一緒に頑張ろう!」と言ったが、彼の声は虚しく響くだけだった。
結局、彼らはその夜の恐怖から逃れることができず、あの神社に何時間も閉じ込められることとなった。
周囲の雪が降り続き、朝が訪れることともに、彼らは神社の奥に飲み込まれていった。
何年後、あの神社に足を運ぶ者はなくなり、ただ雪が静かに舞う場所に、彼らの声だけが今も囁かれている。
己の罪を認めずに逃げた者たちは、永遠にその場所に留め置かれることになるのだ。