「消えた仲間たちの教室」

ある静かな夜、涼しい風が吹く中で、山村の片隅にある廃れた学校に友人たちが集まった。
彼らは肝試しのためにこの場所を選んだが、そこには過去の悲劇が秘められていた。

その学校は何年も前に閉校されており、村人たちは恐れからこの場所を避けていた。
特に、その一角にある教室では、過去に不幸な事故が起こり、そこで生き残った者は皆、心に傷を抱えていたという。
今夜、彼らはその教室を舞台に、肝試しをすることに決めた。

「本当に大丈夫かな?」涼介が不安そうに問いかけた。
彼は噂を聞いて怯えていたが、仲間たちに押されて目の前のドアを開ける勇気を振り絞った。
中に入ると、暗闇が彼らを包み込むようだった。
懐中電灯の光が、埃まみれの机や椅子を照らし出す。

「ここが、あの噂の教室か…」佐奈が呟く。
彼女の声には不安が混じっていたが、好奇心がそれを上回るようだった。
彼らは教室の中を掻き分けながら、真ん中にある大きな黒板の前に集まった。
その黒板には、過去に生徒たちが書いたであろう顔が描かれていた。

「なんか、気味悪いな…」涼介が目を細めると、他のメンバーも同意するよううなずいた。
直後、彼らの懐中電灯の光が微かに揺れた。
その瞬間、教室の中に冷たい風が吹き抜け、彼らの視界が一瞬暗くなる。
気がつくと、彼らは奇妙な感覚に包まれていた。
まるで無数の目に見られているかのようだった。

「ねぇ、やっぱり帰ろうよ。」玲奈が顔面を青ざめさせながら叫んだが、涼介は心の中で何かが起こる予感がしていた。
彼は今、限界を超えた恐怖を感じていた。
何かが近づいている。
その境界を越えれば、戻れないと。

「もう少しだけ。」友人たちは口々に言い、心の中の悪い予感に全く気付いていないようだった。
しかし、その時、彼らの目の前の黒板が、不自然にヒビが入って崩れ始めた。
教室の温度が急激に下がり、涼介は息を呑んだ。

「なんだ、これ!」佐奈が悲鳴を上げた。
その時、教室の壁が急に消え、彼らは薄暗いトンネルの中にいた。
何も見えない、何も聞こえない。
ただ、彼らの心の中には不安と恐怖が渦巻いていた。
そして、また冷たい風が吹き抜ける。

「助けて!」と叫ぶ玲奈の声が響く。
周りの空間は無限に広がり、限られた選択肢を失い、中に閉じ込められているようだった。
彼らは、その場から逃げ出そうと、必死で走り始める。
しかし、出口は見当たらず、彼らの心は消えていく恐怖に蝕まれていた。

「もう帰れない…消えちゃう…」涼介はかすかな声で呟く。
他の仲間たちは次第に姿を消していく。
「やめて!戻ってきて!」彼は全力で彼らを求めたが、彼らはまるで霧のように消え去ってしまった。

涼介は、独りぼっちになり、廃校の恐怖が牙を剥く。
その瞬間、強い風が彼を飲み込み、彼は教室の中で目を覚ました。
周りは静まりかえっていた。
かすかに響く声は消え、教室はもとの状態に戻っていた。
しかし、彼は一つの真実に気づく。

彼の仲間たちは、もう戻ることができない。
彼らは過去の事故に繋がる影の中に消えてしまったのだ。
涼介は恐怖に駆られながらも、後悔の念に苛まれ、誰かに話しかけることすらできない。
彼はそのまま、冷たい教室の中で孤独に立ち尽くすことになった。

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