昔、静かな村に「時の池」と呼ばれる神秘的な池がありました。
その池は、周囲の人々から神聖視され、村の伝説では「深い絆で結ばれた者たちが、この池の水に触れることで新たな解を得られる」と言われていました。
しかし、その伝説には裏の顔もあり、池に触れた者は時として、その関係性が「間」によって壊れてしまうこともあると、村の長老たちは口にしていました。
ある夏の日、大学生の健一と遥は親友同士で、久しぶりにこの村を訪れることにしました。
幼い頃からの絆を確認し合うようにして、二人は池へ向かいました。
健一は水面に映る自身の姿に目を奪われながら、「この池には不思議な力があるらしいよ」と言いました。
遥は微笑み、「試してみようか」と水に手を浸しました。
その瞬間、池は静かに波立ち、健一も思わずその水に触れた瞬間、彼の目の中に光が宿った。
他方、遥もまた何か感じるものがあったようで、「なんだか彼の気持ちが分かる気がする」と言いました。
二人は絆を再確認したのだと嬉しさを感じていました。
しかし、その数日後、二人の間に少しずつ亀裂が生じることになりました。
小さな喧嘩やすれ違いが頻発し、やがてその間に生まれた距離ははかり知れないほどになっていきました。
健一は「どうして急にこんな振る舞いを」と思いつつ、遥が自分に心を開いてくれないことを不満に感じました。
ある夜、健一は次第にそのことが心に重くのしかかり、彼女について考える時間を持ちました。
そこで彼は、池での出来事や彼女の思いを振り返り、もう一度会って話をする決心をしました。
そして彼は翌日、遥にメッセージを送りました。
「池にもう一度行こう。お互いに話し合おう」と。
二人は不安を抱えながらも、再び「時の池」へ向かいました。
その時、健一の心には何か薄暗い影が覆っているのを感じました。
それに気づかない遥は彼を無邪気に見つめ、再び池のそばに立ちました。
「もう一度、手を入れてみない?」と遥が提案すると、健一は言い出しかねましたが、結局やってみることにしました。
二人は手を合わせ、再び水に浸しました。
すると、今度は水面が大きく波立ち、まるで池が生きているかのように揺れました。
その瞬間、池の水面に無数の光が現れ、二人の心にそれぞれの願いや思いが浮かび上がります。
遥の心の奥底には「このままずっと仲良しでいたい」という願いが、健一の心には「友以上の関係になりたい」という願いがありました。
しかし、その思いを受け止めるには大きな「間」が存在していたのです。
濁った水面から突如として沼のような黒い影が飛び出し、それぞれの思いを奪うかのように絡みつきました。
二人は驚き、体が動かずにいました。
過去に絆で結ばれていた自分たちの関係が崩れ去ろうとしているのを感じました。
その時、健一はこの問題を解決するには、まず「解」を見つけなければならないと思い至りました。
「お願い、元のの私たちに戻りたいんだ」と健一が叫ぶと、遥もその言葉に続きました。
「私も、あなたも大事な友達だから、何とかしよう!」その言葉が風に乗って池に届いた瞬間、黒い影は暗く立ち上り、波紋となって消えていきました。
やがて静けさが戻り、二人は再び池の水を見つめました。
さっきまでの不安は消え、沸き起こる安心感に包まれたのでした。
彼らはお互いの気持ちを理解し合い、関係を築き直すことができました。
「時の池」の伝説は本当に力を持っているのかもしれないと、心から感じたのです。
その後、時が経つにつれ、二人の絆は一層深まり、何があっても支え合える関係になりました。
今でも健一と遥は「時の池」を訪れることがあり、その度にあの日のことを思い出しては笑っています。
絆と解、そして間がもたらした出来事が、彼らにとってかけがえのない思い出となったことを誇り屈んでいます。