深夜、静かな田舎町にある古びた廃屋。
町の人々はその家を「光の家」と呼び、不気味な噂を語り継いでいた。
入ってはいけない場所とされるその屋敷には、ある「謎」が潜んでいた。
町を離れ、都心に住む青年の健太は、その噂を耳にして興味を覚えた。
彼は友人の雄太と一緒に、その廃屋を訪れることにした。
都会の喧騒とは真逆の静かな場所で、彼らは肝試しをすることにしたのだ。
夜が更けるにつれ、月明かりが屋敷を照らす中、ふたりは慎重に家の中に足を踏み入れた。
ドアを開けると、冷たい風が吹き抜け、健太は思わず身震いした。
廊下の先には、すりガラスの窓から漏れる神秘的な光が見えた。
雄太もその光に魅了され、ふたりはゆっくりとそこへ向かっていった。
その光は、どこからともなく現れたものだった。
まるで生きているかのように、彼らを誘うようにして flickered(ちらついて)いた。
ふたりはその正体を確かめるために、光の先へと進み続けた。
しかし、進むにつれて、妙な感覚が健太を襲った。
周囲の空気が重く感じ、心臓の鼓動が早まった。
それでも勇気を振り絞り、彼は光の来源を突き止めるために歩みを進めた。
ついに辿り着いた先には、光に包まれた謎の「条」があった。
それは本棚のように見えたが、形が一般的な本棚とは明らかに異なっていた。
そこには大小の本や箱、さらには何も書かれていない紙が並んでいた。
健太が手を伸ばそうとしたその瞬間、不意にその本棚が自身の意思を持つかのように動き出した。
驚いた健太は後ずさり、そのまま転んでしまった。
すると「条」の影から何かが現れた。
それは人の形をした、光で満ちた存在だった。
姿は逆光の中でぼんやりとしており、顔は見えなかったが、彼にはその存在が何か特別なものであることが伝わってきた。
その瞬間、健太の頭の中には無数の映像が流れ込み始めた。
それは何か過去の記憶のようであり、彼らが生きてきた世界とはまるで逆のものだった。
彼の目の前に広がる景色は、彼の知っている町ではなく、全く異なる風景。
光が強く、どこか温かさを感じる一方で、彼の心には不安が募った。
「何故、私たちを呼ぶのか?」 雄太が思わず叫んだ。
その声に反応するように、光の存在は一瞬こちらに視線を向けた。
しかし、答えは返ってこなかった。
彼らはただ、その存在から逃げようとしたが、足がすくんで動けなかった。
そこで突然、彼らの背後から声が聞こえた。
「その『条』は、人々の願いを書き記すためのものだ。だが、書かれた願いは逆の現実を引き起こす。」その声はハッキリとした女性の声で、健太は全身が凍りついた。
顔を向けると、そこには一人の女性が立っていた。
彼女は美しかったが、その目には深い悲しみを秘めていた。
「ここに残された願いは、光に導かれたもの。だが、叶えられることはないの。」健太は恐怖を感じながらも、彼女を見つめ続けた。
その瞬間、光の存在が激しくさらなる光を放った。
彼は気を失い、気がついた時には廃屋の外に転がっていた。
暴風のような音が耳に残りながら、辺りを見回すと、雄太の姿はどこにもなかった。
彼が最後に見たのは、光に包まれた女性と、無数の願いに属する「条」だった。
健太は自らの運命と向き合い、彼女の言葉が真実であったことを理解した。
しかし、運命に翻弄され、彼一人だけがその場に残されたのだ。
その後、廃屋は町の人々によって忘れ去られ、誰も近寄ることはなくなった。
だが、今も光は夜空を照らしている。
健太は一人、その「光の家」に隠された謎と向き合うことを余儀なくされていた。