帯の静かな町に、一つの言い伝えがあった。
その町には「光の帯」と呼ばれる場所があり、夜になると不思議な光が現れ、人々を引き寄せると言われていた。
その光はただの自然現象ではなく、何か別の存在が潜んでいると語られていた。
主人公の佐藤健二は、町外れに住む普通の若者だった。
彼はその噂を聞くたびに興味をそそられ、好奇心からその「光の帯」へ行くことを決心した。
友人の中村千夏は、健二の幼馴染であり、彼の冒険心を心配していた。
千夏はいつも慎重で、何事も考え抜く性格だった。
「健二、そんなところに行くのはやめたほうがいいよ。怖い話がたくさんあるんだから」と彼女は言った。
しかし、健二は「大丈夫だよ、ただの光だろう。何も起こらないよ」と彼女の心配を軽く流した。
千夏は心配しながらも、結局は健二と一緒に行くことにした。
その夜、二人は懐中電灯を持って「光の帯」を訪れた。
月明かりの下、二人は町の外れにあるその場所にたどり着くと、目の前には緑の草が生い茂る小道が広がっていた。
道の先には、確かにぼんやりとした光が見えていた。
「ほら、あそこに光が見えるよ。本当にただの光だろう？」健二が言うと、千夏はその光に目を凝らした。
しかし、何か不気味なものを感じ取り、体が震えるような感覚に襲われた。
「行くのはやめよう。なんか変だよ」と彼女が言ったが、健二は気にせず前へ進んでいった。
二人はその光を追いかけるように進んでいった。
光はゆらゆらと揺れながら、まるで彼らを誘うかのように動いていた。
光の正体を確かめるため、健二は意を決してその方向へ向かって歩いた。
千夏は不安な表情で彼の後を追っていたが、彼女の心のどこかには、光に惹きつけられる自分がいた。
そして、光に近づくにつれて、次第に周囲の静けさが異様な重圧感に変わっていった。
草木のざわめきも、虫の音も消え、ただ光だけが彼らの視界を支配していた。
光は今や目の前に迫っており、健二はそこに手を伸ばそうとした。
「健二、待って！やめて！」千夏が叫んだ。
その声に反応したかのように、光が一瞬、明るくなった。
健二はその瞬間、何かに包まれるような感覚を覚えた。
それはまるで、光の中に吸い込まれていくような、暖かくもあり、同時に恐怖を呼び起こすものであった。
千夏は恐怖に駆られ、健二の腕をつかみ、「戻ろう！もう本当にやめよう！」と叫んだ。
健二はふと我に返り、その光が本当に何であるかを考えた。
彼はその場から立ち去ることを決意したが、光はまだ彼を誘うように揺れていた。
二人はその場から逃げるように帰路についた。
振り返ると、光はどんどん遠ざかっていく。
だが、胸の中には、何かがつっかえている感覚が残っていた。
光はただの光ではなく、何か特別な意味を持っていたのかもしれない。
その後、健二はその体験が決して忘れることのできないものとなった。
「光の帯」に関する噂は、彼らの記憶の中に刻まれ、町の伝説として語り継がれることになった。
健二と千夏は、ある意味で「光の帯」によって自分たちの心の奥に潜む恐れを見つけたのだった。
時折、健二は夜空を見上げて思い出す。
「あの光は本当に何だったのか」、そして千夏の声を思い出しながら、その日の出来事を再考するのだった。
いつか再び、その光に誘われることがあれば、彼は過去を振り返ることなく、しっかりと自分の道を歩む決意をした。
