舞台は、北海道の小さな町。
この町には、昔から語り継がれている不気味な伝説があった。
それは「陰の神」と呼ばれる存在で、光の届かないところにひっそりと潜んでいると言われていた。
この神は、悪しき者の魂を集め、さらなる悪を孕ませる存在だと噂されていた。
主人公の名前は佐藤健太。
彼は普通の大学生で、日々の勉強や友人との時間を大切にしていた。
しかし、ある日、彼は友人たちとの飲み会で奇妙な話を耳にする。
それは、町の外れにある廃墟の神社で、陰の神が目撃されたという噂だった。
若者たちの心を掴む怪談話に、彼も興味を惹かれた。
友人たちもまた、悪ふざけ気分でこの話に乗り、「今夜、行ってみようぜ!」と盛り上げた。
深夜、健太と数人の友人たちは、廃墟の神社へと向かっていた。
月明かりだけが道を照らし、不気味な影を作り出している。
神社に到着すると、彼らは静まり返った空気を感じた。
森の中に佇む神社は、ひっそりとした存在感を放っていた。
神社の奥には、木製の祠があった。
友人の一人が「ここが陰の神の祠だろう」と指さす。
ギャグのようにするつもりだった友人たちだが、神社に一歩足を踏み入れると、異様な空気に包まれていた。
深い静寂とともに、どこか不気味な感覚が健太を襲った。
「ここ、出て行こうぜ」と後ろにいた友人が言ったが、他の友人たちは「いや、せっかくだから一枚写真を撮ろう」と提案した。
その瞬間、健太の目の前に不気味な影が現れた。
それは、まるで人の形をした闇が具現化したような存在だった。
彼は一瞬、心臓が凍るような恐怖を感じた。
友人たちもその気配に気づき、恐れを抱き始めていた。
「大丈夫、大丈夫だって」と健太は自分を励まし、周囲を見渡したが、その影もまた周囲を照らす月光に溶け込んでしまった。
興味本位でこの場所に来たのに、彼らは次第に焦りと恐怖に駆られ始める。
影は一度消えたが、今度は彼の後ろにひっそりと立っているように感じられた。
冷たい風が吹き抜け、誰かの低い声が耳元で囁いた。
「お前たち、悪を孕ませてやろう」と。
健太は恐ろしさのあまり思わず後ずさりする。
「行こう、もう帰ろう!」友人の一人が声を震わせた。
彼は強く頷き、神社を後にしようとしたが、その瞬間、足元から冷たい感触が広がった。
まるで地面が彼を引き寄せるかのように感じられた。
「あっ、やばい!」と叫び、彼は力いっぱいに地面を踏みしめた。
友人たちも恐れていたが、健太はなんとか立ち直り、鬼のように大声を上げた。
「行くぞ!」その言葉が彼の道を開く。
彼らは急ぎ神社を後にした。
しかし、家に帰った後も、健太の心には不安がまとわりついた。
「あの影、まだ、いるのかも」と。
数日後、悪夢を見た。
夢の中で、彼は再び陰の神に遭遇した。
影の神は「お前は私が孕ませた悪を逃れられない」と言い放ち、彼の体を冷たく包み込んだ。
その瞬間、健太は目を覚ましたが、何かが彼の中で変わってしまった気がした。
それからというもの、彼の周囲では次々と予想外の不幸が起こり始めた。
友人の一人が事故に遭い、別の友人は精神的な問題を抱えるようになった。
健太は彼らを助けたいと思ったが、自分の中にある「悪」がその手を引くような感覚を覚え、次第に周囲を避けるようになっていった。
彼は再びあの神社を訪れることを決意した。
陰の神と向き合わない限り、この悪から逃れる未来はないと考えた。
しかしそこの風景は、彼を迎え入れることなく厳然として存在し続けていた。
彼は恐怖を感じながら祠に近づき、「陰の神よ、私を解放してくれ!」と叫んだ。
その瞬間、影は彼自身の中に現れた。
健太は苦しみながらも、自らの悪を受け入れ、「私がもう一度、その影を解放する」と呟いた。
「私を忘れないで」「私を解放して」と、影の言葉が響く。
やがて、影が闇に溶け込み、静けさが戻った。
健太はその場から離れたが、彼の中には別の道を歩む覚悟が残されていた。
悪は彼の心の一部となり、二度と背負いきれないものとして存在し続けるのだった。