「消えた者たちの道」

深い森の奥に、ひっそりと佇む古びた道があった。
その道は、誰も通らないことで有名で、村の人々は決して近づこうとはしなかった。
なぜなら、その道には不気味な伝説があったからだ。
かつて、その道を通った者は、決して戻らなかったという。
森の奥から響く声と笑い声は、彼らに取り憑き、そのまま姿を消してしまうというのだ。

ある日のこと、若い男性がその道を見つけた。
彼は仲間と一緒にハイキングをしていたが、興味をそそられるその道を見た瞬間、進むことに決めた。
仲間たちは強く止めたが、彼は笑い飛ばしながら道に足を踏み入れてしまった。
「大丈夫だよ、ちょっとした冒険だ!」と言い残しながら、一人で進んだ。

彼は徐々に道を進むにつれ、周囲の雰囲気が変わっていくのを感じた。
光がだんだんと薄れて、静寂が支配する。
その時、彼はふと背後から感じる視線に気づいた。
振り返っても誰もおらず、ただ木々がざわめくだけだった。
しかし、視線を感じる度に、背筋が寒くなるような感覚が彼を襲った。
それでも彼は気を強く持ち、先へ進むことに決めた。

道の先には、薄暗い空間が広がっていた。
そこには、不気味に笑う顔が突如として現れた。
それは人間の形をしていたが、目は異常に大きく、口元には笑みを浮かべていた。
彼は心の底から恐怖を覚え、後ずさりした。
しかし、恐怖心に反して、なぜか彼はその顔から目を離すことができなかった。

「見て、見て!」その顔は、まるで囁くように言った。
「ここは楽しいところだよ。みんなが待っている。」

彼は思った。
「みんな」という言葉が、少し気になった。
彼は思わずその顔を見つめ返したが、今度はその目が不気味に光り、笑い声が耳に響いてきた。
彼は突然、自分の体が動かなくなったかのように感じ、ただその笑い声を聞くしかなかった。
周囲の空間が歪み、次第に彼の意識が薄れていく。
まるで、自分が笑い声の中に消え込んでいくようだった。

気がつくと、彼はその道の最初にいた。
何も変わっていないように見えたが、彼の心の中には異様な恐怖が芽生えていた。
振り返ると、森は静まりかえり、彼の後ろにいた笑う顔がチラリと見えた。
彼は気づいたのだ。
「あれは、戻ってこられた者じゃない。」

その後、彼は村に戻り、その道のことを話し始めた。
しかし、誰もが彼の話を信じなかった。
彼は仲間に絶対に近づくなと警告したが、彼の言葉は彼らの耳に届かなかった。
時間が経つにつれ、彼の心には暗い影がつきまとい、笑い声が耳の奥でひたすら鳴り響いていた。

彼が村にいたある晩、そうした笑った顔が夢に現れ、不気味に「見て、見て」と囁くたびに、またその道に戻ってしまうのではないかという恐怖に駆られる日々が続いた。
彼は自分の中の闇に飲み込まれ、決してその道から離れることができなかった。

その後、彼の姿も次第に村から消え、再びあの道を通る者はいなくなった。
村人たちは、彼の恐れたものを忘れ始めたが、今でも時折、その道に笑う声が響くことがある。
それは、今もなお、誰かを誘い込むための声なのかもしれない。

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