「燈台の光に閉じ込められて」

修は大学生活の疲れを癒やすために、古びた燈台がある漁村へと旅行に出た。
彼はその村で有名な「光の怪談」についての興味を持ち、町の人々から様々な話を聞いた。
燈台から見える光が、時折海を照らしているとされる。
しかし、その光は決して近づくことを許さないとのことだった。

興味をそそられた修は、夜の海岸へと向かった。
月明かりの下、波の音だけが静寂に響く中、燈台のシルエットが夕暮れを照らしていた。
彼は少しドキドキしながら、燈台の周囲を歩き回ってみることにした。
海の向こうからは、風に乗って微かな光が見えたが、それは自然の光とはかけ離れた、不気味な輝きを放っていた。

修はその光に引き寄せられるように、足を進めた。
近づくにつれて、光は彼の頭上へと移動し、まるで何かが自分を見守っているかのような錯覚に陥った。
心臓が高鳴る中、彼はそれを追いかけていった。
波の音が漸次大きくなるにつれ、彼の周囲には静かな緊張感が漂っていた。

突然、光がすっと消えた。
修は周囲を見渡したが、どこにもその明かりは見当たらなかった。
その瞬間、自分がどこにいるのかわからなくなった。
初めての恐怖が彼を襲った。
その時、耳元でかすかな声が聞こえた。
「わたしを助けて…」その声は、善悪を超えた思いのこもった響きだった。
思わず振り向いたが、誰もいなかった。

修はその声の主を探す決意をした。
胸の鼓動が止まることはなかったが、彼はその幻影の正体を明らかにしたいと思った。
そして、大胆にも燈台の中へと足を踏み入れた。
薄暗い螺旋階段を上がり、頂上にたどり着くと、そこには一つの光の球体が浮かんでいた。
彼の手の届く距離に、その光はやわらかく感情を孕んでいた。

「あなたは誰?」修は声をあげた。
すると、光は徐々に形を変え、かすかな人影が現れた。
透き通った輪郭の中に、かつてこの村に住んでいた女性の姿が見えた。
彼女は切なげに修を見つめ、口を開いた。
「私は、ずっとここに閉じ込められている…光が私を守っていてくれるけど、同時に恐れているの。あなたは私を解放できるの?」

驚く修は、そのまま彼女の目を見つめ返した。
彼女は自分よりずっと前に命を落とし、この燈台にまつわる悲しみを背負っていることを理解した。
彼の心に、彼女の苦しみを救いたいという決意が生まれた。
「どうすれば、あなたを解放できるのか?」修は問いかけた。

光は一瞬大きくなり、輝きを増した。
「私をこの場所から解き放つには、光を受け入れる覚悟が必要よ。私を忘れないで…」「わかった、私はあなたを忘れない。必ず、あなたを導くから。」修は心の底からそう誓った。

彼は自らの意志を持って光を掴み、彼女のために力を注いだ。
すると、光の球体は彼の体を包み込んだ影響で、夜空へと昇っていく。
それは霊が解放される寸前の証のようだった。
直後、燈台の明かりが強烈に輝き、修の目を眩ませた。
その次の瞬間、全てが終わった。

目を開くと、修は浜辺に横たわっていた。
夜が明け、海が穏やかに波を打っていた。
灯台の姿も見え、彼はその光がもうすでに故人を解放したことを理解した。
彼は振り返り、感謝の気持ちを込めて手を合わせた。
彼女の声はもはや聞こえなかったが、修の心には、彼女の祝福の光が輝いていた。
修は旅の終わったことを実感し、再び日常へと戻っていくのだった。

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