静まり返った町の片隅に、古びた神社が佇んでいた。
周囲は繁華街とは打って変わって薄暗く、常にひんやりとした空気が漂っていた。
人々は神社の存在を知りながらも、決して近づこうとはしなかった。
それは、この神社には「迷う者」が宿っていると言われていたからだ。
ある晩、ひとりの若い女性、名を光（ひかり）と言った。
彼女は疲れた心を抱えながら、ひとりで神社を訪れた。
日々の喧騒に疲れ、彼女は自分自身を見つめ直し、何かに答えを求めていた。
しかし、神社に足を踏み入れた瞬間、周囲の空気が重くのしかかる。
暗闇の中にひそむ何かが、彼女をじっと見つめているような感覚がした。
神社の中は薄暗く、燭台の明かりだけが頼りだった。
その明かりの中、彼女は立ち尽くしていた。
そんな時、耳元に囁く声が聞こえた。
「迷ってはいけない、迷ってはいけない……」その言葉はかすかに響き、彼女の心の奥深くへと潜り込んできた。
迷子のように感じる彼女に対する警告のようだった。
不安な気持ちを抱えたまま、彼女は神社の奥へ進んでいった。
すると、突然、真っ暗な闇が彼女を飲み込み、目の前が真っ白にぼやけてしまった。
やがて、再び視界が戻ったとき、そこには薄暗い迷宮のような空間が広がっていた。
周囲には無数の道が続いており、どれもが同じように見えた。
彼女は自分がどこにいるのか、自分がどうしてここにいるのかを忘れてしまった。
「戻らなければ……」彼女の心にそんな思いが芽生えた。
だが、どの道を選んでも、必ず迷ってしまう。
心の中に渦巻く「迷」の感情が、彼女をさらに焦らせ、混乱させていた。
何度も道を選び、方向を変えるが、いつの間にか元の場所に戻ってしまう。
そんな時、彼女はふと、ある声に振り向いた。
「助けてほしい……」それは、彼女と同じように迷い込んだ者の声だった。
小さな影がそこに立っていた。
彼女はその影に近づいてみると、それは子供だった。
目は虚ろで、何も見えていないようだったが、彼女に向かって一歩ずつ近づいてきた。
「一緒に帰ろう……」子供はそう呟いた。
光はその言葉を聞くと、彼女の心に決意をもたらした。
この迷宮から抜け出す方法は、ただ自分一人ではなかった。
共に迷っている者と馬の気持ちを共有し、連帯感を築くことが重要だった。
彼女は子供の手を取り、「一緒に帰ろう」と力強く返すと、迷宮の中で手探りで道を探り始めた。
しかし、迷宮の闇は深く、道は幾度も分かれ、時には恐ろしい影が彼女たちの足元をすり抜けて行くようだった。
彼女の心はだんだんと不安と恐怖で満ちていったが、子供の存在がその心にぬくもりを与えてくれた。
「迷わないで、私がいるから。」子供は優しい声で言った。
その瞬間、光は自らの心に眠る「覚」を感じた。
迷っているとは、ただ無闇に進むことではない。
その迷いの中に多くの選択肢があり、気持ちを持ち寄り、共に進むことで新たな道を見つけられるのだと。
光は再び立ち上がり、進むことを決意した。
彼女は手を握りしめ、後ろにいる子供に向かって言った。
「一緒に進もう、私たちには道があるはずだ！」その言葉と共に、彼女は力強く足を踏み出した。
そして、彼女たちは少しずつ迷宮の出口を見つけ始めた。
道がひとつ、またひとつと現れていく。
影たちも次第に薄れていき、迷いが解け始めた。
その先に光が差し込み、やがて二人は神社の出口へと辿り着いた。
彼女は振り返って、影の中で眠っていた迷たちに手を振った。
「これからも、私は迷わない。」
その後、光は子供と共に町に戻り、神社を訪れるたびに、彼女の心には迷わず進む力が宿っていた。
そしていつしか、彼女は迷いを恐れず進む生き方を根付かせていた。
迷うという選択こそが、彼女の未来を明るく照らす力になって行った。
