秋の終わり、友人たちと訪れた郊外の古びた園。
園内には色とりどりの紅葉が舞い散り、人々はその美しさに心を奪われていた。
しかし、誰もが気にも留めなかったが、この園はかつて、悲しい歴史を抱えていた。
数年前、ここで一人の女性が命を落とした。
彼女は心の病に悩まされ、周囲との繋がりを断ち切ってしまった。
その影響で、彼女の血はこの場所に染み込み、今でもその存在を悼むかのように静かに佇んでいたという。
ある日、大学生の健太とその仲間、優子、健二、そして真奈がここに遊びに来た。
楽しい会話を交わしながら散策しているうち、彼らはふと入り口から見えにくい奥の方へ足を踏み入れることにした。
そこには薄暗い森が広がり、樹木が絡み合って道を塞いでいた。
「ちょっと入ってみない？」健太が提案した。
仲間たちは一瞬ためらったが、興味が勝り、後に続いた。
次第に彼らは、闇に包まれた奥深い場所に足を運んでいった。
その場所は、まさに不気味さが支配していた。
周囲の静けさは異様で、何かが彼らを見ているような気配を感じさせた。
「ここ、本当に大丈夫かな」と優子が言い出す。
だが、健太はこう言った。
「ちょっとした冒険だよ、怖がるな。」
彼らはさらに奥へ進むにつれ、次第に不安を覚え始める。
そこで、健二が足を止めて指を指した。
「あそこ、何か立ってる…」
一同が視線を向けると、そこには白い浴衣を纏った女性が立っていた。
ぼんやりとしていて、まるでこちらに気づいていないかのようだった。
彼女の姿は血のように赤い顔をしており、その眼差しはどこか虚ろに見えた。
「近づかない方がいいかも…」真奈がつぶやくが、健太は興味を失わずに強気で進もうとした。
「何か話しかけてみよう！」
その瞬間、女性が振り向いた。
目の前に立つ彼女は、何を思っているのか、ただ静かに彼らを見つめ返していた。
その視線は鋭く、長い間孤独と悲しみに苛まれてきたことが伝わる。
彼女の目の隙間から、無数の涙が流れるように見えた。
「あなたたち、迷っていますか？」突然、彼女が声を発した。
彼らは思わず息を飲んだ。
「え、あの…」
「迷っているから、私のところに来たのでしょう？」彼女はそう言うと、ふと歩き出す。
彼女の後ろをついていくかのように、健太たちも動いた。
まるでその場から逃げられないかのように。
道を離れ、人里離れた空間にいた彼らの感覚は次第に変わっていく。
気づけば、彼らは循環するように元の場所に戻れず、同じ景色を繰り返し見ていた。
「どうなってるんだ？」健二が叫ぶが、女性はただ微笑んでいる。
「ここにはお友達がたくさんいるの。喧嘩はよくないわ。」彼女は淡々と言ったが、彼女の目にはかつての絶望が宿っているのを健太は感じていた。
彼は「俺たち、迷っちゃったのか？」と聞くと、彼女はその言葉に優しく頷いた。
「承知よ、あなたたちも心の一部で迷子になっているのね。」
彼らはそれぞれの心の奥にある闇を意識し始めていた。
優子が「そんなことない！」と否定するが、彼女の内面で渦巻く不安が、彼女の声を歪めた。
「お前ら、本当はどう思ってるんだ？」と健二は仲間を見つめ言った。
周囲に漂う緊張感が高まり、彼らの声は次第にかき消されていった。
争うことの無意味さが心に響き始める。
白い浴衣の女性は、そんな彼らを見つめて唇を動かした。
「嘘をつく必要はないのよ、赤い血のような真実を見つめて。」
その瞬間、彼らは気づく。
彼女の言葉が暗闇に広がり、彼らの足元を覆い尽くしていくことを。
彼らは手を取り合い、一緒に立とうとしたが、その力は無力だった。
虚無感が彼らを包み込み、まるでそこに立つことすら許されないかのようだった。
女性の姿が次第にぼやけ、彼らはもがき続けた。
「迷うことこそ、悪いことじゃない。血の繋がりは深いもの。あなたたち、私の仲間になってみる？」その言葉は最後の瞬間、彼らの心の奥で回り続けた。
一瞬の静寂の後、彼らの感覚は切れ、目の前にはどこか温かく、しかし冷たさを感じる空間が広がっていた。
心を解きほぐすような魅力があったが、決して戻らぬ道であることが鮮明に彼らの中に残り続けることとなった。
