「呪われた封印の声」

田舎の小さな村の外れに、長い間封印された「ま」があった。
この場所には昔から忌まわしい噂が流れている。
「ここには悪いものが住んでいる」と、村人たちは恐れを抱き、誰も近づこうとはしなかった。
特にその場所を訪れた者は、必ずや不幸に見舞われるという言い伝えがあった。

ある日、大学生の佐藤と、彼の友人である中村は、好奇心に駆られてその場所を探検することに決めた。
ノートを持参し、心霊現象の研究と称し、他の友達に話すネタとしての冒険心もあった。
夕暮れ時、二人はその場所にたどり着いた。

茂った木々の間を抜けていくと、まるで別世界のような静けさが漂っていた。
「ここが噂の場所か…」と佐藤はつぶやいた。
すると、中村は少し怯えたような表情で言った。
「あまり長くは居たくないな、何かがいる気がする。」

だが佐藤は、その恐怖心を振り払うように勇気を振り絞り、「大丈夫だよ、何も起こらないさ」と笑いかけて、奥へ進んだ。
そこには古びた建物が佇んでおり、黒ずんだ扉が閉ざされていた。
佐藤はその扉を押し開け、中に踏み入った。

中に入ると、異様な空気が二人を包み込んだ。
ほこりまみれの家具や、ひび割れた壁、薄暗さに包まれた空間が彼らを圧倒した。
何かが引き寄せられるように、二人は部屋の奥へ進んだ。
その時突然、耳に響く声がした。
「ここにいてほしい…」

驚いて二人は顔を見合わせた。
「何だ今の声!?」と中村は不安げに叫んだ。
しかし佐藤はその声に探求心を刺激され、更に深く進むことを決めた。
「何か面白いことがあるかもしれない」と。

奥の部屋へ入ると、壁には薄い絵が描かれていた。
そこで彼らは、一冊の古びた日記を見つけた。
日記には、かつてこの場所に住んでいた少女の悲劇が綴られていた。
彼女は家族から疎外され、孤独に悩む日々を過ごし、「誰か私を見て」と願っていた。
だが、彼女の想いは誰にも届くことはなかった。

「これ、相当やばいんじゃないか…」中村は不安をあらわにした。
しかし佐藤は引き込まれるように日記を読み続けた。
「私は決して別れない」といった最後の言葉が心に突き刺さり、彼の身体には冷たい汗が流れた。

その瞬間、後ろでドアがバタンと閉まり、外の光が奪われた。
二人は真っ暗な空間に閉じ込められてしまった。
打ちひしがれた気持ちで、佐藤は急いで日記を手放して、出口を探ろうとした。
「早く出よう!」と叫ぶが、ドアに触れようとした瞬間、目の前に黒い影が浮かび上がった。

「人間は私を忘れた…だから戻ってきた」と、その影は低い声でささやいた。
佐藤は恐怖で身動きが取れずにいたが、中村は絶望的に叫んだ。
「帰りたい、ここから出たい!」

その時、佐藤の頭の中に少女の声が響いた。
「私と一緒にいて…」まるで彼女の悲しみが押し寄せてくるかのようだった。
彼はその瞬間、彼女の孤独がじわじわと伝わるのを感じた。
二人は恐怖と不安に押しつぶされそうになりながらも、お互いを見つめ合った。

「信じろ、ここから出られる!」と佐藤は叫んだ。
しかし、影は彼らの間に亀裂を生み、二人はそれぞれ別の方向へ引き裂かれてしまった。
目の前に迫る影は、そのまま同化してゆく。
佐藤の心には、もはやどんな勇気も残っていなかった。

その後、村人たちはその場所を恐れ、再び封印された「ま」の存在を語り継いだ。
かつての仲間たちを信じようとしたが、結局彼らは悪の封印された空間に取り憑かれ、二度と戻ることのない者たちとなった。
静寂の中に響く少女の声だけが、永遠にその場所に留まり続けるのだった。

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