その町には、「墟」と呼ばれる場所があった。
かつて繁栄を誇った集落の跡地で、今は廃墟と化したその場所には、言い伝えがあった。
そこに近づく者は、誰もがその魅力に惹かれ、しかしその影には恐ろしい妬みが隠れていると。
ある晩、夜羽魅零は友人たちと共に墟を訪れた。
彼女は明るく輝く月明かりの下で、周囲の暗闇を背にして無邪気に楽しんでいた。
しかし友人たちは、その場所の雰囲気に不安を覚えていた。
魅零はそんな彼らを笑い飛ばしながら、墟の中心部へと足を踏み入れた。
墟の中心には、朽ち果てた家が一軒立っていた。
古びた木の壁は風化し、屋根には苔が生え、隙間から見える内側は暗闇に覆われていた。
魅零はその家に魅入られ、思わず足を踏み入れた。
彼女の心には、好奇心と共に孤独感が湧き上がっていた。
「この家には、かつて嫉妬に囚われた者たちの思いが残っているのよ」と、友人の一人が囁いた。
「彼らは、自分の嫉妬心がもたらす苦しみの果てに、この場所に縛りつけられているという伝説があるんだ。」
魅零はその言葉を気にせず、家の中を探検することに夢中だった。
暗い廊下を進み、ほこりまみれの家具をかいくぐっていく。
彼女の心の中では、妬みが生む負の感情が渦巻いていた。
「他の友人たちよりももっと、特別な存在になりたい」と願う自分。
いつも自分だけが無視されるのではないかという恐れが、彼女の心に潜んでいた。
続いて進んだ部屋の中で、彼女はふと、壁に飾られた古い鏡に目を奪われた。
鏡は無造作に置かれ、そこには誰かの怨念が宿っているかのような不気味な気配が感じられた。
魅零は自分の姿を鏡で確認しようとしたが、映るのは彼女の姿ではなく、古い服をまとった女の顔だった。
その女は憤怒に満ちた目で見つめ返してきた。
魅零は動悸が速くなり、恐怖を感じた。
「これは夢だ。夢だ」と自分に言い聞かせながら、鏡から目を離そうとした。
しかし、その女の声が耳の中で響いてくる。
「私を忘れないで。妬まれた思いを抱えて、私は永遠にこの場所にいるの。」その声は魅零の心奥深くに触れた。
彼女はその霊の存在を感じながら、身動きが取れなくなった。
「あの女は、私がどうなるのかを知っているのだろうか。」恐れと緊張が彼女の心を掴んだ。
瞬時に、周囲の空気が重くなり、壁の奥から無数の手が伸びて、彼女を引き寄せようとした。
「この場所から逃げなければ、あなたも私のようになってしまう!」彼女はその瞬間、強烈な嫉妬心が彼女の見えない敵のように迫るのを感じた。
彼女の心の中に沈んでいた妬みが、今、具現化したかのようだった。
彼女は一瞬のうちに意識が混乱し、自分が誰かを妬んでいるのか、自分が彼女に妬まれているのか、わからなくなってしまった。
魅零は恐怖から逃げ出し、外の空気を求めて家の外へ飛び出した。
友人たちは彼女の後を追い、墟の中の恐ろしい現象から逃げようと必死に走った。
一緒にいた仲間たちも、同じように恐れを感じていた。
しかし、彼女の心の中には今でも、その女の声が響き続けていた。
「もう一度、私を思い出して。あなたの心の中で転がる嫉妬心を捨てない限り、永遠にこの墟に繋がれてしまうわ。」
魅零は振り返り見ることもできずに、家から離れていった。
しかし、その日は彼女にとって忘れられない一晩となった。
墟で得た経験は彼女自身の心の闇を映し出すものであり、彼女は妬みを手放さなければ、自分が呪われてしまうことを学んだのだ。