深夜の公園は、静寂に包まれていた。
明かりの下にちらほらとあるベンチや遊具は、昼間の賑やかさとはまるで別物だ。
人通りのない道を清は、一人で歩いていた。
彼女の心中には理由があった。
それは、友人たちとの約束だったのだ。
「この公園に、夜に行くと不思議な現象が起こるらしいよ。」そう言ったのは、何気ない会話から生まれた噂だった。
しかし、何も起こらなければ、特に気にすることもなかっただろう。
だが、その話が清の心にひっかかり、彼女は一人で公園に来ることを決めた。
月明かりに照らされたここは、昼間とは異なる雰囲気を醸し出している。
清は道を進むうちに、彼女が小さな猫を見つけた。
小さな白い猫が、光を反射させて煌めく目をこちらに向けていた。
猫は無邪気に遊んでいたが、彼女はその姿に何か不気味さを感じた。
公園には、他に生き物はいない。
しかし、猫がまるで誰かを待っているかのように感じられた。
心の奥に根付いていた不安が、彼女をさらに進ませる。
清は遊具のあるエリアに足を踏み入れた。
見上げると、月が雲の隙間から顔を出し、その光がまるで道を照らしているかのように感じた。
「ここで何かあるかもしれない」と思いながら彼女は立ち止まった。
突然、背後から「助けて…」と囁く声が聞こえた。
最初は風の音かと思ったが、確かに人の声だった。
その声は清の心に響き、彼女は振り返った。
しかし、誰もいない。
ただ静まり返る公園。
だが、心のどこかでその声の主がいるのではないかという予感がした。
「誰?」清は恐る恐る周囲を見渡した。
しかし、誰一人として彼女の視界には現れなかった。
そのとき、ふと視線を気にした道の先、暗がりから清の名を呼ぶ声が聞こえた。
「清、こちらに来て…」
それは、かつての友人、限の声だった。
限は一年前に亡くなった。
清はその声を聞いた瞬間、内心の恐怖が駆け巡る。
何故、今ここにいるのか。
清はその言葉につられたように、道を進んでいった。
暗闇を歩むにつれ、限の姿が見えてきた。
白い服を着た彼女は、柔らかな微笑を浮かべていた。
しかし、その笑顔にはどこか陰りがあった。
「清、私に会いに来てくれたの?」その言葉には不思議な魅力があった。
清は胸が苦しくなる思いで答えた。
「限、あなたはもういないはずなのに…」すると、限は一歩近づき、彼女の顔を覗き込んだ。
その瞬間、すべての感情が溢れ出した。
「私を助けなければ、ずっとここに留まり続けるの。あなたと一緒に過ごしたい…」と限は囁いた。
清は動揺し、心の奥で葛藤が生まれた。
あの楽しかった日々、限との思い出は夢のように美しかった。
しかし、それと同時に清は、限のことを忘れようとしていた。
「でも、私はもう戻れないの。あなたも、行くべきところへ行かなければ…」清は声を震わせながら言った。
すると限は無言で、ただ微笑んでいた。
その顔の表情が少しずつ変わっていくのを感じた。
その瞬間、殺風景な公園に不気味な冷気が流れ込んできた。
影が彼女の足元に迫り、周囲の景色が歪んでいき、構造が変わり始めた。
道は無限に伸び、清は自らの道を選ばなければならないと瞬時に悟った。
「あなたの決断次第よ、清…」限は消えかけながら囁くと、その後ろには暗闇が迫ってきた。
清は心を決めた。
限との別れを受け入れる勇気を持ち、立ち向かう覚悟を決めた。
「さよなら、限。あなたの存在に感謝している。」彼女の声は穏やかだった。
すると、限の笑顔が一瞬輝き、そのまま消えた。
その後、道は静まった。
清の目の前には、今までの暗闇から解き放たれた明るい道が広がっていた。
彼女は一歩踏み出し、新たな未来へと向かって進んでいったのだった。
この公園の道は、彼女にとって心の限界を超えるための場所となり、清はその先に広がる新しい日々を迎える準備をしていた。