「忘れ去られた園の舞」

ある静かな村の外れに、長年放置された古い園があった。
この園には、かつて美しい花々が咲き誇り、人々が集まる憩いの場であった。
しかし、時が経つにつれて、園は荒れ果て、外界から忘れ去られた場所となっていた。
岸田健太はその園の近くに住む青年だったが、ある日、友人から「あそこには幽霊がいる」と聞きつけ、興味を持つようになった。

「実際に行ってみよう」と健太は決意し、夜中に月明かりの中、忍び込むことにした。
不気味な静けさの中、彼は園の奥へと進んでいった。
月の光が闇を照らし出すたびに、健太の心臓は高鳴った。
彼は途中で、古びたベンチや、かつての名残を残す花壇を見つけた。
そして、その奥に何かが光っているのを見つけた。

それは、一見してただの古い指輪に見えた。
しかし、触れてみると、不思議な感覚が彼を包み込んだ。
何かが引き寄せられるように感じ、思わずその指輪を手に取った瞬間、視界が変わった。
この瞬間、周囲の景色はぐるぐると回り始め、彼は意識を失いかけた。

目が覚めると、健太は奇妙な状況に陥っていた。
彼の周りには、様々な時代の衣装を着た人々が飛び交っていた。
草花の中を縫うように、彼らは自由に空を舞い、無邪気に笑い合っている。
健太はまず、彼らが自分の存在に気付いていないことに驚いた。
彼が声をかけても、誰も反応を示さない。

彼はその様子に恐怖を覚えつつも、興味をそそられた。
「彼らは一体、何者なのか?」健太はそのままもう少し近づいてみることにした。
その瞬間、彼は自分が飛んでいることに気付いた。
足元が浮かび上がり、まるで風に乗っているかのような感覚だった。

「私は、見えない存在になってしまったのか…」彼は恐怖の中、成功と思い込み、必死にその場から離れようとした。
しかし、彼が移動するたびに、飛んでいる人々が次第に視界に入り、彼の横をすり抜けていった。
彼らの表情は、嬉しそうで、どこか楽しげだが、彼にはその楽しさが理解できなかった。

やがて健太は、彼らが過去の人々であることが分かった。
かつてこの園で楽しいひとときを過ごしていた人々が、死後もこの場にとどまり、飛び回っているのだ。
彼らは自らの幸福な思い出に引き寄せられ、永遠にこの園を彷徨い続けているのだった。

「私もここに留まる運命なのか?」健太は心が抜けるような恐怖を感じた。
彼は必死に園の外へ逃げ出そうとしたが、体は動かず、彼の意識は引きずり込まれていった。
「いいえ、私はこの場所にいたくない!」彼は叫び続けた。

すると、周囲の人々が次第に彼の方を振り向いた。
その瞬間、彼は彼らが少なからず彼に気付いたことを感じ取った。
そして、彼らの中から一人、女性が大きな声で叫ぶ。
「ここは私たちの場所!私たちと一緒にいよう!」

健太はその言葉に恐怖を感じ、全力で逃げた。
しかし、まるで引き寄せられるように、彼は再び浮かび上がり、周囲はさらに明るく、楽しい景色に変わった。
彼はいつの間にか、花々が揺れる美しい光景の中で、無数の顔が彼を待ち受けていることに気付いた。

それから彼は、永遠にこの園の中で他者とともに忘れ去られる存在になってしまった。
彼の中には、風に乗る爽やかさとともに、恐怖と幸せが交錯する感覚が残り続けていた。
過去の人々とともに、彼は去りゆく存在としてこの園に留まることを運命づけられた。
月明かりの下、園は静かに佇む。
怪談の影を背に受けながら、健太は新たな一歩を踏み出したのだった。

タイトルとURLをコピーしました