冬のある晩、悠斗は友人たちとともに、長いこと使われていないという「停」へハイキングに出かけた。
その停にまつわる噂は昔から絶えず、特に真夜中に訪れた者には恐ろしい現象が起こるという。
友人たちはそれを肝試しと称して、刺激を求めて集まったのだ。
「本当に何も起こらないって!」と明るい性格の美咲が言ったが、その言葉に悠斗は心の中で疑念を抱いていた。
小さな探検心を持っていた彼は、その「停」がかつて人々の賑わいで満ちていた場所だったことを知っていた。
今はただの廃れたスポットに過ぎないが、かつての思い出の片鱗を感じさせる何かがそこにはあった。
午後が過ぎ、夕暮れが迫る頃、彼らは「停」と呼ばれる場所に辿り着いた。
朽ち果てた木などの残骸が点在し、空はすでに薄暗くなり始めていた。
幽霊のように冷たい風が吹きすさび、彼らは若干恐怖を感じたが、好奇心が勝った。
「どうする?もう少し探索してみるか?」と健人が提案すると、他のメンバーも賛同した。
彼らは心を一つにしながら、かつての活気を思い出すようにあたりを歩き回った。
悠斗は一人前に進み、かなりの松の木が茂ったエリアに足を運んだ。
そのとき、不意に「誰かいるの?」という声が耳に入った。
悠斗は驚き、振り返ってみると友人たちがまだその場にいた。
瞬間、彼は見知らぬ少女を見かけた。
彼女はうっすらとした白い服を纏い、こちらに向かって微笑みかけていた。
「ねえ、君、誰?」悠斗が問いかけると、少女はその笑顔を一瞬崩した。
そして、何も言わずに立ち去り、再び森の奥へと消えていった。
彼の心臓は高鳴り、無意識に友人たちのところに戻る。
「どうしたの?」美咲が心配そうに尋ねる。
「誰か見つけた?」
悠斗は僅かに震えながら、彼が見たものを伝えた。
友人たちの中には半信半疑な者もいたが、結局、彼らはその少女を追いかけることにした。
薄暗い森の中を進むにつれ、周囲はだんだんと静まり返っていき、異様な緊張感が漂った。
やがて、彼らは停の奥にかつての遊び場があった場所にたどり着いた。
しかし、そこには一切の痕跡がなかった。
ただ静寂のみが支配していた。
その瞬間、再び悠斗の耳にあの少女の声が響いた。
「帰ってきて、悠斗。」
「え?」彼の声が小さく返事する。
周囲を見渡すも、その少女の姿はもうどこにも見当たらない。
彼の心の中に不安が広がる。
「もう行こう」と健人がつぶやいたが、その言葉に皆の恐れが確信に変わる。
その夜、友人たちは停に留まらないと決めたが、帰り道でもあの少女の声が彼らに聞こえ続けた。
不安を抱きながら帰宅した彼らだったが、悠斗の心には影がべったりとついて回るようになっていた。
彼はどうしてもその少女の顔を忘れることができなかった。
数日後、悠斗は高熱にうなされるようになった。
まるで誰かが彼を呼び続けているようだった。
そして、彼の夢にその少女が現れるようになった。
「私を忘れないで。ずっとここにいるから」と言って、彼を手招きした。
気のせいだと否定し続けるも、日が経つにつれ悠斗はますます弱り、何もできなくなっていった。
友人たちも彼を心配して訪れてくれたが、彼の状態は一向に改善する兆しが見えなかった。
ついに、彼は再び「停」に戻ることにした。
自分を呼び続ける存在の正体を確かめるために。
心の奥にある恐怖を抱えつつ、悠斗は再度その場所を目指した。
そして、その瞬間、自分が何を求めていたのかを悟った。
彼が停にkin多たどり着くと、待っていたのはあの少女だった。
幽霊のように見えながらも、優しい微笑みを浮かべている。
悠斗は踏み出そうとするが、恐怖が足を固定させた。
彼女が近づいて来ると、彼は強い宿命的な運命に引き寄せられる感覚に襲われた。
「一緒に帰ろう」と少女は囁いた。
その言葉は悠斗の心に影を投げかけ、彼は完全に魅了された。
魂の重さが彼を引き留める中で、彼はそのまま彼女の手を取り、永遠にこの場所で過ごすことを選んだのだった。
彼の心の中には、かつての思い出や希望が消え、静かな闇だけが広がるのだった。