心の奥深くに巣食う恐怖、それは「永遠に消えない想い」だった。
彼女の名前は佐藤美咲。
明るくて元気だった彼女は、周囲の友人たちからも愛されていた。
しかし、心の中には誰にも言えない孤独感がひっそりと根を下ろしていた。
美咲は、一年前に突然、最愛の恋人である陽介を失った。
彼との日々は夢のようで、どこにでも一緒に行った。
彼の笑顔は美咲の心を温め、彼の存在が全てだった。
しかし、交通事故で彼を失ったその瞬間から、美咲の心は暗闇に包まれることになった。
彼女はその痛みを忘れようとするが、どんなに忘れようとしても、心の奥底で陽介の存在は消えることがなかった。
そんなある晩、美咲は自宅のベランダでぼんやりと星空を眺めていた。
ふと、彼の声が耳に届いた気がした。
「美咲、一緒にいてほしい」。
驚きと共に振り返ると、誰もいない静寂の中、自分の心だけがざわめいていることに気づく。
それから数日後、美咲は不思議な夢を見るようになった。
夢の中で、陽介が彼女の前に現れ、「君の思いが強すぎて、私の心はここに留まっているんだ」と告げた。
美咲は目を覚ますと、心に重いものを抱えていた。
彼を思い続けることは、彼を苦しめているのではないかという気持ちが、彼女をより深い悩みへと追いやった。
彼女は、陽介の想いを心から解放できない苦悩に悩んでいた。
ある日、美咲はネットで見つけた「心を浄化する儀式」に興味を持った。
それは、特定の場所で自分の心の痛みを吐き出し、解放するものだという。
彼女は藁にもすがる思いで、その儀式を実行することにした。
選んだ場所は、二人が初めてデートした思い出の公園だった。
夜、静まり返った公園の中、美咲は陽介の名前を呼びながら、彼との思い出を語り始めた。
「陽介、私はあなたを愛している。でも、私の想いがあなたを苦しめているのなら…」彼女の言葉は次第に熱を帯びていく。
自らの心の声を大きくすることで、彼との過去を少しずつ解放していく。
その瞬間、強い風が吹き荒れ、周囲の木々がざわめいた。
美咲は一瞬、彼の姿が現れるのを感じた。
「美咲、ありがとう」と微笑みかけているような俊敏な影。
彼女の心の中に新たな光が差し込んだ。
彼は自分を思っていてくれることを知り、心が温もりを取り戻していく。
だが、美咲の思いは完全に消え去らない。
儀式を終えた美咲は、自宅に帰る道すがら、陽介の声が確かに聞こえた。
「君の気持ち、私には届いている。だから、もう心配しないで。私はここにいるよ。」その言葉を胸に、彼女は少しずつ心の重荷が軽くなっていくのを感じた。
愛していること、それが彼を苦しめることはないと気づいたのだ。
美咲は、その後も時折陽介のことを思い出すが、その気持ちは彼を忘れることではなく、愛を胸に抱くことで、彼との思い出が永遠に生きることを受け入れた。
彼女は、自分が抱えていた「永遠の想い」を解放することで、新たに道を歩む決意を固めた。
その夜、彼女は再び夢を見た。
陽介が微笑み、「もう大丈夫だよ、美咲」と語りかけてくる。
美咲は、心の中で彼を生かし続けることができると確信した。
そして、心の苦しみを手放すことで、彼との思い出を大切にしながら、未来へ向かって歩き出すのだった。