村の外れにひっそりと佇む古びた家があった。
その家には、長い間誰も住んでいなかったが、噂によれば、そこには奇妙な力を持つ「物」が存在すると言われていた。
それは、昔の住人が大切にしていた一対の古い鏡であり、時折、裏に隠された秘密を映し出すと言われていた。
主人公ののは、好奇心の強い少女で、いつも友達と一緒にその謎の家に近づいては、噂話を楽しむのが好きだった。
しかし、ある日のこと、彼女は一人でその家に行く決心をした。
それは、彼女が唯一親友と呼べる存在の現が、最近不幸な事故に遭ったからだった。
彼女は、現の無事を願い、「物」を探しに行こうと思ったのだ。
家の中は暗く、埃っぽい空気が充満していた。
のは懐中電灯を持って、慎重に進んで行く。
部屋の片隅で、光を反射する何かが見えた。
彼女は、そこに散らばった古い家具を乗り越えて近づくと、二つの古い鏡が見えた。
一見、普通の鏡のように思えたが、何か不気味な雰囲気を放っていた。
のは勇気を振り絞り、一つの鏡に手を触れた瞬間、強い震動が伝わり、視界が揺らいだ。
彼女の目の前に、懐かしい顔が映し出された。
それは、現の姿だった。
彼女は驚き、思わず呼びかけた。
「現、あなたなの?」鏡の中の現は、ただ静かに微笑み返すだけだった。
その瞬間、のの心に不安が広がった。
現の笑顔はどこか影を持ったものだったからだ。
彼女は、鏡の奥に何かが隠されていることを感じ取った。
「私がここに理由があるの?」彼女は願った。
「現を助けたい。」
のはもう一つの鏡に目を向けた。
そこには、暗い影が立ち込めていた。
その影は現の事故と関わりがあるように見え、何か大切なものを彼女から奪おうとしていた。
彼女は手を引っ込め、鏡を見つめ続けた。
現の身に起こったことは、この縁の果て、つまり運命の結果だったのかもしれない。
彼女は決意した。
「私は現を救うために、自分の何かを捧げる。」のは、手を高く掲げ、心からの叫びを上げた。
「現、私はあなたを思い続ける!あなたが私の心の中で生き続ける限り、何があっても負けない!」
その瞬間、大きな衝撃が走り、二つの鏡が光を放った。
彼女の思いは、現の姿へと吸い込まれていく。
それと同時に彼女は、これまでの思い出や、二人で過ごした日々の感情が次々と鏡の中に流れ込んでいくのを感じた。
彼女の心の中の愛情、友情、切なさが、「物」に触れることで力となり、現への道を開こうとしているようだった。
驚くことに、鏡の中の現はその瞬間、彼女に向かって手を差し出した。
のは反射的に手を伸ばす。
両者の手が重なり、瞬時に強いエネルギーが放たれた。
静寂が訪れ、のは目を開けた。
彼女は目の前に現の姿がしっかりと存在するのを見て、ほっとした。
しかしその瞬間、視界がぼやけ、家の周囲が揺らぎ始めた。
のは感じた。
「何かが違う。」この現は、鏡の奥で彼女の思いによって生まれた存在だった。
彼女は理解した。
「私は現の代わりに何かを失った。」その瞬間、彼女はそのことに気づいた。
現が消えてしまうと、彼女自身が空虚な存在になってしまう。
与えた愛情が全て消えてしまうのではないかと恐れた。
その時、家が一つの動きで崩れ始めた。
のは背後に迫る闇を振り払うように逃げ出す。
しかし、彼女の中には、現の思いと共に生きていこうという強い気持ちが満ちていた。
彼は彼女の記憶の中で、今も生き続けている。
のは、彼のために自分の記憶を守ろうと決意した。
彼女は悲しみを胸に刻みながら、ゆっくりと家を後にした。
そして、運命に導かれた道を探し続けるのだった。
彼は彼女の心の中で永遠に生き続けるから。