古い村には、誰もが恐れる「壊れた館」と呼ばれる場所があった。
数十年前、そこは栄華を極めた名家の家であり、子どもたちが笑い声を上げるエネルギーに溢れていた。
しかし、ある日、館は大火事に見舞われ、一夜にして全てを失ってしまった。
名家の跡地には、残骸だけが残り、村人たちはその場所を恐れ、近づくことを避けていた。
そんな中、若い女性、リナは好奇心に駆られ、廃墟に足を踏み入れることを決心した。
彼女は大学で心理学を学ぶ学生であり、古い伝説や神秘に興味を持っていた。
仲間のタケシとユウコも一緒に行くことになった。
彼らはその館の噂を聞き、何か新しい発見ができるのではないかと期待していた。
夜、月明かりが照らす中、リナたちは壊れた館へ到着した。
風に揺れる木の枝が不気味な音を立てている。
館の入り口は大きな扉が壊れ、半分開いていた。
リナは一歩踏み出し、暗闇の中に入っていく。
「本当に大丈夫かな？」ユウコは不安に思っていたが、リナの興奮した様子を見て、彼女も勇気を振り絞った。
館の内部は、崩れかけた壁や壊れた家具でいっぱいだった。
しかし、その中に異様な静けさを感じた。
どこか、封印された何かがあるような気配だった。
リナは心の中で好奇心と恐怖が交錯していた。
「私たち、呪われたものに触れない方がいいかもね。」タケシが独り言のように呟いた。
リナは近くの古い鏡に目を奪われた。
その鏡は焼け焦げ、ひび割れていたが、彼女の反映が何故か異なるものに見えた。
まるで彼女自身ではない誰かがそこに映っているかのようだった。
「これ、変じゃない？」リナは仲間に目を向けると、二人も驚いていた。
「ほんとに、なんか不気味だ。」
その時、リナの手が鏡に無意識に触れた。
その瞬間、冷たい感覚が彼女の体を貫き、頭の中に浮かぶ映像があった。
それは館が火事になる前の光景、楽しそうに子どもたちが遊んでいる姿だった。
彼女は驚きのあまり後ろに飛び退いた。
「な、何だったの？」
「大丈夫か、リナ？」タケシが声をかけると、彼女は再び気を落ち着かせた。
「私、何かを見たみたい…あの子どもたち、ここで一体何が起こったの？」
その時、館の奥からかすかに叫び声が聞こえた。
「助けて！助けて！」リナの心臓が高鳴る。
彼女は自分の目の前に何かが現れるのではないかと感じ、足を踏み出す。
そして、深い闇の中に進んでいく。
タケシとユウコはリナを追いかけようとしたが、まるで何かによって引き止められているようだった。
リナが進むと、そこに現れたのは火事で亡くなった名家の母親だった。
裂けた目で彼女はリナを見て、「私を忘れないで…」と語りかけた。
リナは恐怖で体が動かなくなり、「なぜ、私を呼ぶの？」と呟いた。
「私には呪いがかかっている。この館に触れた者は私の運命に再び結びつけられる…。」母親の声は徐々に不気味な響きを持ち始めた。
リナの目の前には、鏡に映った自分が徐々に変わっていく様子が見えた。
彼女は今度こそ、この呪いを解かなければならないと思った。
リナは再び鏡に触れ、自らの存在をかけて、館の悲しみを解放しようと決意した。
彼女は心の中で、「私があなたを忘れない」と云い続けた。
その瞬間、館全体が激しく揺れ、火の光が広がり、母親の姿は消えていった。
次の瞬間、館は音を立てて崩れ落ち、リナは無意識に仲間と共に外へ飛び出していた。
彼らは無事だったが、館が壊れた瞬間、村人たちが見守る中で、その霊は解放された。
二度とこの場所を忘れることはないと、リナは誓った。
しかし、夜に見た夢の中にだけ、その母親の姿が再び現れ、目を引き裂かれたように彼女を呼んでいた。
