深い森の奥、村から離れた場所にひとつの神社があった。
その神社では、巫女が代々言い伝えられてきた神の声を聞く特別な存在だった。
巫女の名は美咲。
彼女は幼い頃からその神社で育ち、神の声に導かれながら村人たちの願いを祈る日々を送っていた。
美咲はある日、村にやってきた青年、健二と出会った。
彼は都会からの移住者で、村の quiet さに惹かれて住むことを決めたのだ。
初めて彼を見たとき、美咲の心に奇妙な感情が芽生えた。
それは愛に似た感情で、彼が話すたびに美咲の心は高鳴った。
しかし、彼女は巫女の宿命を背負っていたため、その感情を素直に受け入れることができなかった。
ある晩、美咲は神社で神の声を聞いた。
「真実の愛は、闇の中に隠れている」と。
その言葉が彼女の心に引っかかっていた。
健二と向き合う時、彼女はどうしてもその言葉を思い出してしまう。
美咲は悩んだ。
真実の愛が自分の心の中にあるのか、それとも彼との絆の裏には見えない闇が潜んでいるのか。
そんな思いを抱きながら過ごしていたある日、美咲は神社の境内で不思議な現象に遭遇した。
闇が一瞬、彼女の目の前に渦巻き、そこから人の姿が現れた。
それは彼女が失った先代の巫女だった。
驚きと共に美咲は声を失った。
しかし、先代の巫女は優しく微笑み、彼女に語りかけてきた。
「あなたの愛の行く先を見極めたければ、私が導こう」と言った。
その言葉に美咲は導かれるように、健二を呼び寄せた。
彼の目の前に現れると、先代の巫女はさらに明るく光り、現実と夢の狭間で美咲と健二を見守っているようだった。
奇妙な感覚に包まれながら、二人は手を取り合った。
すると、先代の巫女が言った。
「愛するとは、自らの闇をも受け入れ、共に歩むことだ。ここの闇はあなたたちの心の中にある。それを恐れずに、真実の愛へと進むのだ。」
美咲は背筋が震えた。
彼女の中に潜む恐怖、すなわち二人の関係が破綻すること、または彼を失うことへの不安。
それが闇だった。
彼女は健二を見つめ、彼を抱きしめると自らの心の中の暗い感情を解放する決意をした。
二人の関係が始まって数ヶ月後、村では不穏なことが起き始めていた。
美咲が神社を守るため、近隣の者たちの求める声を無視することはなく、反対に彼女はますます深く巫女としての役割を果たしていった。
その結果、神社の力が弱まり、村に闇の影が忍び寄っていた。
美咲は健二に悩みを打ち明けた。
彼の不安の神を感じ取っていたのだ。
「私はあなたを守りたい。でも、私の愛によってあなたが危険にさらされるのではないかと思う」と、美咲は涙を流しながら語った。
すると健二は彼女をぎゅっと抱きしめた。
「お前が信じる道を行けばいい。俺はお前と一緒にいる、どんなことがあっても」と言って彼女を支えた。
その夜、神社の境内で再び先代の巫女が現れた。
「あなたたちの愛が真実なら、どんな闇も乗り越えられる。愛を信じて、心から向き合うことが重要だ」と告げると、彼女は再び闇に消えていった。
美咲と健二は共に、愛と向き合う覚悟を決めた。
彼女は巫女としての使命を果たしながらも、彼との絆を深める決意を新たにした。
愛は恐れを越え、闇を照らす明かりになった。
二人は未来に向かって歩き出し、愛が運命を切り開くことを信じ続けた。
