帯の小さな町に、カという若い女性が住んでいた。
彼女は都会から引っ越してきたばかりで、静かな環境を求めていた。
自然に囲まれたこの場所で、心の平穏を見いだそうと日々を過ごしていた。
ある日、彼女は町の古い図書館に足を運んだ。
古めかしい館内は静寂に包まれており、木の香りが漂っていた。
カは何気なく本棚を歩きながら、自分に合いそうな本を探していた。
そこで彼女の目を引いたのは、埃をかぶった一冊の古い日記だった。
表紙には何も書かれていないが、ふとした好奇心から手に取り、椅子に座って中を開いた。
そのページには、美しい筆跡で何日も続けて書かれた内容が綴られていた。
どうやら、これは数十年前にこの町に住んでいた女性の日記のようだった。
読み進めるうちに、カはその日記に強く引き込まれていった。
日記の中の女性が、家族や恋人、そして彼女の心の葛藤について書いている様子が、まるで自分のことのように感じた。
特に印象的だったのは、彼女が「代」という言葉を使って書いた箇所だった。
ある日、彼女は自分が「過去を背負う代わりに、未来をつくる」と記していた。
その言葉がカの胸に響き、何か強い感情が湧き上がってきた。
しかし、読み進めるにつれて、日記の内容は次第に暗い方向へと進展していった。
女性の日記には、奇妙な現象や不幸な出来事が書かれている。
町の人々が次々と失踪し、彼女自身も孤立感を深めていく様子が描かれていた。
そして、その夫もまた、突如として姿を消してしまったという。
カはその内容に恐怖を覚えたが、同時にその女性の運命に惹きつけられた。
彼女は日記を読み続け、いつしかその女性の存在を解明することに心を奪われてしまった。
ある晩、カはまたその日記を開いていた。
ページをめくるたび、女性の心情とともに不安が押し寄せてくる。
すると、ふとした瞬間、背後で誰かの気配を感じた。
振り返ると、誰もいない。
カは振り向くたび、薄暗い図書館の中でかすかに気配が感じられるようになった。
その後、カに奇妙な現象が次々と起こり始めた。
夜になると、彼女の部屋から一人で書くはずのない文字が浮かび上がってくることがあった。
それはまるで日記の続きを書いているかのようだった。
「私を知って、私を忘れないで」といった言葉が、彼女の耳元で囁かれることもあった。
誰の声なのかわからず、カは恐怖に駆られた。
しかし、同時にその声が彼女に何か大切なものを伝えようとしているように感じる。
ある夜、夢の中で彼女は日記の女性と出会った。
その女性はカに向かって微笑み、「あなたも私の代なのかもしれない」と言った。
その言葉はカの心に深く刻まれた。
彼女はその瞬間、何か大切なことを悟った。
夢から覚めたカは、決意した。
彼女は日記から浮かび上がる言葉を書き留め、自らの未来をつくるために新たな道を歩むことを決めた。
それが彼女がこの町に移り住んだ本当の理由であることを知ったからだ。
だが、カは日記の女性と深く結びついてしまっていた。
彼女が代わりにその運命を背負うことになったのかもしれない。
日記の内容が彼女の心に寄り添い、過去と未来が交錯する瞬間を思い出していた。
カはこの出来事を通じて、自分がこの町で何をつくり、何を受け継いでいくのかを考え始めた。
いつの日か、彼女もまた誰かに思い出される存在になりたいと願いながら、カは新たな一歩を踏み出した。
その先に何が待ち受けているのか、今はまだわからない。
しかし、彼女が選んだ道は、彼女自身の物語を紡ぐ一丁目の始まりであった。
