「光るカメラの呪い」

彼女の名前は美咲。
27歳の彼女は、都会の喧騒を離れ、故郷である小さな村に戻った。
何もかもが変わってしまった村だが、幼い頃の思い出が詰まった古い家は、今も変わらず静かに佇んでいた。
美咲は、新しい生活を始めるためにその家を修繕しようとしたが、何かが彼女を待っているような予感を覚えていた。

ある晴れた日、美咲は家の庭の草を刈っていた。
その時、彼女の目に留まったのは、長い間放置されていたはずの古いカメラだった。
興味を惹かれた美咲は、そのカメラを手に取った。
しかし、シャッターを押しても写真は撮れない。
壊れているのか、フィルムが残っていないのか。
美咲はそのカメラを持って家に戻り、何かの役に立つかもしれないと保存することにした。

数日後、美咲は家の中で一人きりの時間を楽しみながら、カメラを再び手にしていた。
彼女は何気なく、窓の外を見つめる。
その瞬間、何か不思議な感覚に囚われた。
光が一瞬、彼女の視界を覆った。
それは、庭にいた彼女の目の前に現れた薄明かりのようなもので、すっと消えていった。
美咲は戸惑ったが、すぐに気のせいだろうと自分に言い聞かせた。

数日後、再びそのカメラを使おうとした時、美咲はふと懐かしい感覚に襲われる。
過去の思い出がフラッシュバックするように、彼女の心には温かい光が灯った。
それは小さい頃、両親と一緒に過ごした日々を思い出す瞬間だった。
しかし、その瞬間も長く続かず、すぐに喪失感が飲み込んでしまった。
彼女の両親は、事故で他界してしまっており、その思い出は傷のように心に残っていた。

ある晩、美咲は夢の中で両親の姿を見た。
微笑みながら彼女に手を差し伸べる。
その夢はとてもリアルで、彼女はそれを忘れることができなかった。
次の日、彼女はその感情を言葉に表そうと、カメラを持って外に出た。
シャッターを押すたびに、鮮やかに浮かび上がるのは、昔の村の景色や思い出の景色だった。
しかし、美咲が撮影するたびに、何とも言えない喪失感が彼女を包み込むようになった。

そしてある夜、夢の中で再び両親と対面した際、彼女は不思議な現象を体験する。
両親は、彼女の目の前で消えていき、その後、彼女の手元にあったカメラが光り輝き始めた。
美咲は目を疑った。
カメラには、彼女が撮影したはずの写真が映し出され、そこには思い出の瞬間が切り取られていた。
しかし、どの写真も美咲自身の姿が映っていない。
彼女は、カメラの中に魂が宿っているのではないかと恐れを抱くようになった。

それからというもの、美咲はカメラを手放せなくなった。
日々、誰とも会わずに孤独に暮らしていたが、写真を撮るごとに、彼女の内面にも影が差し込むようになっていく。
カメラのレンズを通し、過去と現在が交錯する体験は次第に彼女を蝕んでいった。
不安が募り、日常の喧騒を忘れさせる光の中で、オーラのように漂う喪失感は彼女を包み込んだ。

その後、美咲は村で消息を絶った。
彼女の家には、ただ古びたカメラだけが静かに置かれていた。
村人たちの間では、美咲が撮った不気味な写真の噂が広がり、そのカメラに触れた者には、不幸が訪れるという言い伝えが生まれた。

美咲の存在は村から消えたが、彼女の心の中にあった光と喪の感情は、永遠に消えることはなかった。

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