「過去の記憶が宿る場所」

間に佇む創は、夕暮れ時に漂う薄暗い空気と、静かに揺れる木々の間から、恐怖を覚えていた。
彼は都会の喧騒を離れ、静かな田舎での生活を選んだ。
しかし、その場所には、不気味な噂が伝わっていた。
ここには、過去の亡霊たちがさ迷っていると言われ、現実と虚構の境界が曖昧になっている。
創は特に、その中でも「間」と呼ばれる空間に魅了され、何度もその場所を訪れていた。

「間」には、過去の記憶が宿っていると言われている。
ここに立つと、時間が歪んでいるように感じる。
そして、ふとした瞬間に—無意識のうちに何かが彼の心をつかみ、時空を超える感覚に襲われることがあった。
彼はそれこそが、真の存在を見つける手がかりだと信じていたのだ。

ある晩、創はいつものように「間」に向かって歩を進めていた。
薄暗い森を抜け、いよいよその場所に足を踏み入れる。
月明かりが薄く差し込む中、静けさが支配する「間」に身を置くと、心の奥から静寂が迫ってくる。
彼は深呼吸し、目を閉じて耳を澄ませた。
その瞬間、何かが近づいてくるのを感じた。

「誰か…いるのか?」

創の声は、緊張した空気の中で響き渡った。
返事はない。
しかし、彼の周囲に異様な気配が漂っていた。
まるで、見えない力が彼を包み込んでいるようだ。
胸が高鳴り、背筋が凍る感覚が襲ってきたとき、一筋の淡い光が目の前に現れた。

光の中から、一人の少年の姿が浮かび上がった。
彼は無表情で、じっと創を見つめている。
その瞳の奥には、語り尽くせぬ悲しみが垣間見えた。
創はその少年を見て、恐れよりも何かの導きを感じた。
しかし言葉が出てこない。
すると、少年はゆっくりと口を開いた。

「真実を知りたいのか?」

創は緊張しながらも頷いた。
それに応じて、少年は透き通るような声で語り始めた。
かつてこの場所で、彼の家族が何か重大な秘密を抱えていたこと、そしてそれは彼自身の運命に関わることだと。
それが原因で、彼はこの世を去ることになったのだという。
創はその話を聞くうちに、胸の奥が締めつけられるように痛むのを感じた。

「私が叫んだとき、誰も助けてくれなかった…」

少年の言葉は、創の心に深く響いた。
彼は「間」の真の姿を理解し始めた。
この場所はただの記憶の集積ではなく、迷える魂たちが過去の痛みを背負い続ける空間だと。
彼は自分の選択が、同じように誰かの運命を変えることができると感じ取った。

「あなたたちの真実を知ることが、私の使命だ…」

創は心の中で決意を固めた。
少年の過去の悲しみを受け止め、その記憶を未来に引き継ぐことが、彼の役目だと信じるようになった。
時が経つにつれ、少年の姿は薄れていき、光は創を包み込んだ。

創は再び目を開けた。
そして、不安が消え、穏やかな気持ちに包まれていた。
「間」の静寂がもたらす力を感じながら、彼はそこで過去を痛みとして受け入れ、新たな一歩を踏み出す準備が整ったのだ。
今夜、彼は真の運命を問い直し、懸命に生きることを誓った。

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