静まり返った園の中央には、ひっそりとした池があった。
池の周りは不気味に背の高い木々に囲まれ、木の葉が風に揺れる音だけが響いていた。
園はかつて子供たちの遊び場で、笑い声が絶えなかったが、今ではその面影はどこにも見当たらなかった。
荒れた遊具や老朽化したベンチが、忘れ去られた時間を静かに物語る。
そんな園に、一人の少年、佐藤健太が訪れた。
彼は最近、友人との関係に悩んでいた。
特に仲が良かった山田直樹との関係が悪化し、冷たい視線を送り合う日々が続いていた。
健太は今でも直樹のことを忘れられず、どうにかして元の関係に戻りたいとの思いが強かった。
ある晩、健太は園に忍び込むことにした。
薄暗い中、懐かしい遊具が陰にひっそりと佇んでおり、彼はその場に立ち尽くしてしまった。
急に後ろから誰かの気配を感じた。
振り返ると、そこには直樹の姿があった。
彼はいつも通りの明るい笑顔を向けてくれたが、その目はどこか異様な輝きを放っていた。
健太は違和感を覚え、思わず後退りした。
「お前、どうしてここに？」直樹が問いかける。
健太は何も答えられず、ただ無表情で彼を見つめ返すしかなかった。
その時、池が不気味にざわめき始めた。
水面が波立ち、黒い影が湧き上がるように現れる。
そして、影から現れたのは、彼らが小学生の頃に遊んでいた暗い影を持つ、もう一人の直樹だった。
「俺はお前の本当の友達だ。」影は口を開き、まるで健太の心の奥にある苦しみを引きずり出すかのように続けた。
「お前は直樹を裏切った。彼がどれほどお前を大事にしていたか知らないだろう。」
健太は恐れを覚えた。
直樹が彼を裏切ったのではないか、彼自身が誤解していたのではないかと心がざわめいた。
その言葉が彼の心に刺さり、無力感に包まれる。
そして、影の直樹は微笑みながら近づいてきた。
「お前を傷つけたのは、冗談だったんだ。裏切ったのはお前だろう、健太。」その言葉にどうしようもない恐怖を感じ、彼は思わず後退った。
影は背後にいる本物の直樹を見つめる。
直樹の表情は凍りつき、彼自身も何かを感じ取ったようだった。
池の水がさらに波立ち、周囲にいた無数の影が健太を囲む。
彼は叫び声を上げたが、その声は園の静けさに吸い込まれていく。
影たちは口を揃え、彼の過去を責め立てる。
「お前が直樹を孤独にした、哀しみを抱えさせた。もう逃げられない。」
直樹も、影を見つめながらついに声を失った。
健太は彼の苦しみが自分のせいであることを知り、心の底から後悔した。
彼は仲直りを望んでいたのに、実際には彼が直樹を無視し続けていたのだ。
健太の心の中にあった罪の意識が、影のように彼を取り囲み、彼をあるべき場所から引き戻そうとしているようだった。
「お前は永遠にこの園から抜け出せない。直樹とともに、一緒に過ごした日々を思い出し続けろ。」
恐怖と後悔が渦巻く中、彼は涙を流しながら直樹に助けを求めたが、その声は響き渡ることはなかった。
直樹はただ黙って立ち尽くしている。
その瞬間、健太は自分がいかに自分勝手であったかを理解し、彼の心にはその罪が消えないことを悟った。
彼はその場から逃れようとしたが、どこに行っても彼を包む影と苦しみからは逃れられなかった。
永遠に繰り返される過去の思い出の中で、彼はただの心の葛藤ではなく、恐怖の現実を受け入れざるを得なかった。
园は彼らを永遠に縛り続ける罪の場所となったのだ。
