「友を奪う者の神社」

夜が深くなったころ、太郎は一人で帰路に着いていた。
彼は小さな村で育ったが、その日は特別だった。
最近、彼と親友の健一が夜遅くまで遊びすぎて、大人たちから注意を受けていた。
そのため、今日は少し早めに家に帰ることにした。
しかし、周囲はとても薄暗く、不安な気持ちが胸を締め付ける。

道を歩いていると、太郎はふと森の方を見上げた。
そこには古い神社があり、かつて友人たちと遊んだ場所だった。
神社の奥には、誰も行かないと言われている禁じられた場所があった。
そこには村の伝説が語る「友を奪う者」の神様が住んでいるという。
好奇心が頭をもたげ、太郎は思わずその場所へ足を進めた。

新しい発見を求める心が、彼をその不気味な場所へ導いていた。
昔々、村人たちはその神社で一緒に嘘や秘密を分かち合う儀式を行っていたが、時が経つにつれてその伝説は薄れてしまっていた。
しかし、太郎は若い頃に友人たちと語り合ったその話をふと思い出した。
彼はその時の約束を覚えており、友を大切に思う気持ちが胸に渦巻いていた。

森の奥へ進むにつれて、空気が重くなり、静けさが彼の耳に響いた。
微かな風の音すらも、森の奥深くに吸い込まれてしまうかのようだった。
やがて、太郎は禁じられた場所に辿り着いた。
その場には巨木に囲まれた石の台座があり、まるで人を待っているかのように佇んでいた。

「こういう場所に来るのは、友だちと一緒が良かったな…」とつぶやくと、ふいに背後から声が聞こえた。
「本当にそう思うかい?」驚いて振り返ると、そこには見知らぬ少年が立っていた。
彼は太郎の目を真剣に見つめ、その目には哀しみが宿っているように見えた。
太郎は瞬時に彼に友人の健一を重ね合わせた。

「君は誰?」太郎は驚いた声で尋ねたが、少年は笑顔を崩さず彼に近づいてきた。
「私は健一だよ。君とずっと一緒にいた友だ。」太郎は戸惑う。
しかし、彼が感じたこの少年の親しみは、確かに健一のものだった。

「君は冗談を言っているのか?健一は行方不明なんだ!」太郎が叫ぶと、少年はその場から少し離れたところで悲しむようにうつむいた。
「友達を大切にすることは、時に運命を変える選択ともなる。私を信じて、もう一度その神社に戻ってみないか?」

太郎は少しためらったが、心のどこかでこの少年に引き寄せられていることを感じた。
彼の言うことに従い、二人は神社へ向かうことにした。
夜空には無数の星が輝き、彼の周りは次第に明るく感じられるようになった。

神社に戻ると、少年は太郎に「ここで何かを捧げることで、友を取り戻す力を試すことができる」と教えた。
太郎は友達との思い出の品を探し、健一との思い出のある古いコーヒーのフィルターを手に取った。
それを少年の指示で石の台座に置いた瞬間、周囲が急に冷たくなり、神社の空気が変わった。

「その気持ちが必要なんだ」と少年が言った瞬間、太郎は何かが起きることを感じた。
彼の心に健一の声が響いた。
「僕はここにいる、友として。」

太郎は再び驚いた。
まるで正気を失うかのように、彼の視界に健一が現れた。
不思議なエネルギーが辺りを包み、その力によって太郎は健一の姿を見たとき、全てが運命に導かれていることを確信した。

「太郎、ありがとう。友を信じてくれて。」健一の目が真剣に輝いていた。
「これからもいつでも一緒だ。」その瞬間、太郎は幸せで胸がいっぱいになり、二人は共に新たな冒険へと踏み出す決意をした。

夜空には明るい星々が瞬いていた。
その星々が彼らの友情の象徴であるかのように、静かに見守っていた。

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