ある静かな港町、海の近くにひっそりと佇む古い神社があった。
ここの神社は、町の人々から長い間信仰されてきたが、その歴史は忘れ去られ、今やほとんど人が訪れることもなくなっていた。
ただ、何か不吉なことが起こる度に、町の人々はこの神社に足を運び、祈りを捧げていた。
主人公の和樹は、その町に住む若者だった。
彼には幼馴染の美咲がいた。
美咲はかつて活発で明るい少女だったが、最近は何かに怯えるようになり、その様子を見て和樹は心配していた。
彼女は何度か神社の話をするようになり、そこに何か特別な印があって、それを見つけなければならないと言っていた。
ある晩、美咲からの呼び出しを受けた和樹は、彼女の家に向かった。
彼女は恐ろしい夢を見たと言い、その夢では神社の境内に不気味な影が現れ、彼女に何かを伝えようとしていると言った。
和樹は美咲を励まし、一緒に神社へ行くことにした。
月明かりの下、二人は神社に到着した。
神社は静まり返っており、異様な空気が漂っている。
和樹は「何かあるのかもしれない」とつぶやき、美咲を勇気づけた。
彼らは神社の境内を見回し、木々の間に隠された秘密を探そうとした。
すると、神社の裏手にある古びた石碑に目が留まった。
その石碑には、血のように赤い文字で何かが刻まれていた。
「信じる者へ送り届けられる印」という言葉が浮かんでいる。
和樹はその意味を考え、美咲に向かって言った。
「この印が何かを教えてくれるかもしれない」。
美咲は石碑に手を触れた瞬間、彼女の目が恐怖に満ちた。
彼女は「これが信じた者の運命を変える印なら、誰かを呼び寄せることもできるのかもしれない」と囁いた。
和樹は彼女の言葉に不安を感じつつも、何か手がかりを得るためにその石碑に目を凝らした。
気づくと、あたりの空気が冷たくなり、何かが彼らの周りを取り巻いているように感じた。
和樹は立ち尽くした。
すると、背後から聞こえた不気味な声が彼を振り向かせた。
「印をつける者がいるのか?」と。
その声は、耳元でささやくように響き、恐怖が心を締め付けた。
振り返ると、そこには不気味な影が立っていた。
その影は、血にまみれた白い衣服を着ており、顔はぼんやりとしか見えなかった。
和樹は恐怖で言葉を失ったが、美咲がその影に向かって叫んだ。
「何を求めているの?」
影は一瞬静止した後、不気味に微笑み、こう言った。
「信じる者には、継がれる運命がある。私の血を受け入れなさい」。
その言葉に驚き、和樹は恐怖で動けなかったが、美咲は何かを感じたようだった。
不安と興奮が混ざり合う中、小さな決意を胸に秘めた彼女は、影の前に歩み寄った。
「私があなたの印を受け継ぎます」と美咲は言った。
影は頷き、彼女の手を取ると、彼女の手のひらに自らの血を塗りつけた。
和樹はその光景を目の当たりにし、思わず叫んだ。
「美咲、やめろ!」
だが、美咲はそのまま影の目を見つめ、何かを悟ったようだった。
「これで終わりではない」と彼女は呟く。
その瞬間、彼女の目に血の赤が宿ったのを和樹は見た。
彼女の体が光り輝くように見え、影の存在も徐々に薄れていった。
その後、神社は静まり返り、和樹は美咲の傍に立ちながら、不安でいっぱいだった。
彼女が本当に大丈夫であることを願ったが、神社の夜は彼女の運命を変えてしまったのかもしれない。
彼の心の中に残るのは、印を受け継いだ美咲と彼女が解き明かした神社の秘密だった。
海の波の音が静まる頃、二人の運命は新たな章を迎えようとしていた。