「影の遊び場」

街の片隅にある小さな公園。
その公園には、子供たちが遊ぶための遊具が少し古びていて、昼間は賑やかな声であふれていた。
しかし、夜になると静まり返り、不気味な雰囲気が漂っていた。
周囲に高い建物が立ち並び、影が深く落ちるその場所には、誰も立ち入ろうとしなかった。

ある日の夜、この公園の近くに住む佐藤拓海は、友達と遊んでいても帰る時間が迫っていることに気づいた。
いつもなら帰り道を急ぐが、その日は何故か強い好奇心に駆られ、公園の中に足を踏み入れた。

「ちょっとだけ、探検してみようかな」と心の中で思いながら、拓海は足元でくすぶる思いを押し込めた。
公園の中央には古びたブランコがあり、その周りには長い影が落ちている。
拓海は近づき、静かにブランコに腰掛けると、背後からざわざわと音が聞こえてきた。

「誰かいるの?」と声をかけるも、返事はない。
拓海はただの風の音だろうと自分に言い聞かせ、その後、彼は不気味な気配を感じるようになった。
まるで誰かが自分の後ろに立っているかのようだった。
その瞬間、彼の心に不安が広がる。

拓海は思わず振り返ったが、誰もいなかった。
しかし、何かが自分に視線を送っている気がして、背筋が寒くなった。
彼は再びブランコに座り、自分に言い聞かせた。
「気のせいだ、きっと。」

しばらく静寂が続いた。
時折、ブランコが鳴るたびに、拓海はハッとする。
しかし、彼が不安を和らげようとしていると、古びた遊具の下で目立つものが見えた。
それは、何かの跡のようなもので、薄暗い中にぼんやりと浮かび上がっている。
拓海は興味を持ち、近づくことにした。

その跡は、誰かが描いたような手形だった。
新鮮なものではなく、まるで長い間放置されていたかのようにぼやけている。
しかし、手形の周囲には、さらに奇妙な模様が描かれていた。
それを見た瞬間、拓海は心臓が大きく跳ね上がる感覚を覚えた。

「これは…何だろう?」彼は思った。
その手形に触れてみたい衝動が湧いたが、何かが彼を引き止める。
手形に触れようとした時、急激に冷たい風が吹き荒れた。
拓海は驚き、手を引っ込める。

急に周囲が暗くなり、明るかった街の光も薄れ、まるで彼だけがその場所に取り残されたような気分になる。
心臓が高鳴り、背後の気配が増しているように感じた。
彼は恐る恐る後ろを振り返ったが、そこには誰もいなかった。
ただ、いつの間にか公園の周囲がいつもとは違う形で広がっていることに気づいた。

そこには他の子供たちや家族の姿はなく、どこか不気味な音が響いていた。
拓海は立ちすくみ、恐怖にかられた。
「これ、現実なのか?」彼は思った。
その瞬間、心の中に冷たい声が響いた。
「醒めない夢に帰れ。」

拓海は目の前の光景がリアルでなかったことを理解し初めたが、逃げようとするも体が動かず、その場所に立ち尽くす。
さらに冷たい風が吹き、手形がまるで生きているかのように揺れ動き始めた。

「戻りたい!」拓海は叫び続けた。
しかし、静寂の中で彼の言葉は響かない。
恐怖で身動きが取れず、彼はただその場に立ち尽くすしかなかった。
まるでその街の一部になってしまったかのように。

拓海の心が悲鳴を上げる中、彼は存在すらも忘れ去られる運命に直面し、気が遠くなるような感覚に襲われた。
公園の中での出来事は消え去っていき、彼はただの一つの影として、街の片隅に永遠に存在し続けることになった。

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