作は、郊外の静かな町に住む普通の青年だった。
彼には、学生時代からの親友である田中がいた。
二人はいつも一緒に過ごし、些細なことから深い話まで様々なことを語り合っていたが、最近、田中は急に連絡が取れなくなってしまった。
心配した作は、田中のアパートを訪れることにした。
田中のアパートは古びた木造のもので、薄暗い廊下を進むと、見慣れた部屋のドアに辿り着いた。
作は何度もノックをしたが、返事はなかった。
おかしいと思った作は、管理人を呼び、鍵を開けてもらうことにした。
管理人がドアを開けると、部屋の中は異様な静けさに包まれていた。
田中の姿はなく、部屋には彼の私物がちらばっていたが、その中に彼の気配は感じられなかった。
作は、田中が何かに取り憑かれたのだと思った。
友人が失踪するなんて信じられなかったが、何かの手がかりがあるかもしれないと、部屋の中を探ることにした。
作は壁にかけられたカレンダーを見つけ、その日付が異常なことに気づいた。
田中は、数週間前から毎日同じ日付をマークしていたのだ。
その日付は、「破」という文字が描かれた特別な日だった。
作はその意味を探ろうと、田中の書斎を調べてみることにした。
書斎には、田中が作成したと思われるメモや本が散乱していた。
「の」という言葉が書かれたメモには、彼が追い求めていた謎についての研究内容が記されていた。
その中で、「破」の日付に関する古い伝承に触れた。
そこには、ある人がその日に謎の現象に遭遇し、人が消えてしまうという話が書かれていた。
ただの迷信だと思っても、作の心には不安がよぎった。
その瞬間、部屋の電気が一瞬消えたかと思うと、何かが通り過ぎる気配がした。
冷たい風が吹き抜け、作は思わず後退した。
ふと視線を上げると、部屋の隅に薄暗い影が立っていた。
その影は、田中の姿に似ているように思えたが、どこか異様な雰囲気をまとっていた。
作は恐怖を感じながらも、その者に近づいてみようとした。
すると、影はゆっくりと後退し、捉えようとする作の視線を避けるかのように着実に動いていた。
「田中…？」
そう呼びかけると、影は一瞬立ち止まり、振り返った。
その表情は、かつての友人のものとはまるで違っていた。
無表情で、ただ虚ろな眼差しを向けている。
作は、恐怖が一気に心を覆い尽くすのを感じた。
影は、まるで何かに引き寄せられるかのように、壁に溶け込むように消えていってしまった。
その瞬間、作の心に浮かんだ。
田中が「破」という日付に何かを決意したのだと。
何かを知りすぎた彼は、この「謎」の一部に引き込まれてしまったのかもしれない。
このままでは、彼も同じ運命を辿ってしまう。
作は、田中を救わなければならないと決意した。
その日から、作は田中が追い求めた「破」の謎を解明しようと懸命に研究を始めた。
町の図書館や古い書物を漁り、伝承や神話、そして「消える」という言葉にまつわるものを探し続けた。
数週間が経ったある日、古い文献の中に、「破」という日に遊び心を持って近づいた者は、そのまま謎の中に消える可能性があると書かれているのを見つけた。
作は直感的に、田中が何かを解明しようとしたのは、この「破」に関わる何かを引き寄せてしまったのだと感じた。
解決策は、「破」とは何かを解決し、その真実を見極めることでしかないと悟った。
作は、心の中で田中に誓った。
君を助けるために、最後の力を振り絞ると。
その後、作は田中の心を再び呼び戻すべく、町の山に向かうことにした。
田中が何かを感じた場所、何かに引き寄せられるような不思議な場所。
それがどこなのかを導き出すこと、そして彼の声を聞くことを信じて…。
