彼女の名前は真理奈。
真理奈は小さな村で生まれ育ったが、都会での生活を夢見て早めに家を出た。
彼女が故郷を離れたのは、親友の早紀の存在があまりにも大きすぎたからだ。
早紀は美しく、頭も良く、村の誰もが彼女を敬い、憧れを抱いていた。
真理奈はそんな早紀の影に隠れ、自分自身を見失っていた。
数年が経ち、真理奈は都会で華やかな生活を送っていた。
しかし、心の奥底には早紀に対する劣等感と嫉妬が渦巻いていた。
ある日、真理奈はふと飼い猫の背中に草が生え、彼女が疎ましさを感じるような気持ちになった。
その瞬間、彼女はふと思いついた。
「早紀を消してしまえば、私は彼女のようになれるのかもしれない」と。
悩みは深まり、彼女は村に帰ることを決意した。
自分の中の嫉妬を払拭し、早紀との絆を再確認するために。
だが帰村した彼女を待っていたのは、空虚な村だった。
昔の友人たちは早紀のことばかりを語り、彼女の帰還を歓迎する様子はなかった。
真理奈は村の古い神社に足を運んだ。
神社は彼女が子供の頃、特別な思い出を共有した場所だった。
そこで早紀と過ごした日々を思い出し、あの時の自分がどうだったかを振り返った。
ふと、真理奈は小さな神像を見つけた。
神社の奥に隠されていたそれは、嫉妬の神と呼ばれていた。
彼女は半信半疑だったが、心の底から思った。
「早紀がいなくなれば、私は自由になれる。彼女を消してしまえば…」
真理奈は神像に向き合い、目を閉じた。
「早紀を消してください」と念じた瞬間、冷たい風が吹き抜けた。
彼女の心を凍りつかせるような感覚が襲ってきた。
何かが始まる、そう感じた。
次の日、村には朝から異変が起きていた。
早紀が姿を消したという噂が広がり、村人たちは心配して彼女を探していた。
しかし、真理奈の心の中には安堵が広がっていた。
彼女は早紀の親友であることを忘れ、自分の影にあった過去から解放されたと思った。
その夜、真理奈はその日の出来事を振り返りながら、神社を訪れた。
優雅な月明かりの中で、彼女は幻想的な風景に包まれた。
しかし、その美しさの裏には、誰かの視線を感じるような不安があった。
彼女は背筋がぞくっとするのを感じながら、ふと神像に目を向けると、そこには早紀の姿が浮かんでいた。
早紀は微笑みながら、彼女に語りかけた。
「私がいなくなっても、あなたの心の中には私がいるけれど、あなたの嫉妬が私を連れてきてしまったのね…」真理奈は愕然とし、彼女の言葉が何を意味するのか理解できなかった。
「嫉妬の神が、今度はあなたを狙っている。」早紀の表情が変わり、恐ろしいほどの冷静さを帯びた。
「あなたは私を消したつもりだけれど、私の存在はあなたの心に宿り続ける。だからこそ、あなたは私を忘れることはできない。」
真理奈は恐怖に駆られ、神社から逃げ出した。
その後、村には早紀の姿が見えなくなったが、彼女の幻影はしばしば現れた。
真理奈の周囲にいても、彼女の目にはその存在が見えない。
さらには、他の村人たちには早紀が消えていないと言われ、真理奈はどんどん孤立していった。
嫉妬という感情がどのように人を縛り、心を奪うのかを彼女は思い知った。
代償として、真理奈は早紀との絆を完全に失ったのだった。
しかし、早紀は今も彼女の心の中で生き続け、彼女の心を蝕んでいく。
村の夜空に、いつまでも二人の関係の痕跡が浮かんでいるようだった。
真理奈は自らの嫉妬によって、愛された存在から孤独な存在へと変わってしまったのだった。
