「失われた望みの池」

静かな山の中、春の柔らかな陽射しが木々の間から差し込み、宴のように賑やかだった。
しかし、その美しい風景とは裏腹に、山には一つの不吉な伝説が存在していた。

少年、悠太はその山に友達と一緒にハイキングに来ていた。
子供たちは自然の中で遊びながら、山の秘密や怪談を話し合っていた。
特に、悠太にとっては、その山で語られる「時を超える望み」に興味を持っていた。
彼はその話を一度聞いたことがあった。
ある言い伝えによると、山の奥深くに隠された「望みの池」と呼ばれる場所が存在し、そこに願い事を捧げると、自らの望みを時を超えて実現させることができるという。

悠太はその話を信じる方だったが、友達の中では、ただの迷信として片付ける者もいた。
「そんなの信じてるのか?」と笑って彼をからかう。
しかし、悠太はその日、何か特別な感じを覚えていた。
「皆で行こうよ、望みの池を見に行こう!」と提案すると、仲間たちも少し興味を示した。

みんなで山を登り始めた。
緑に囲まれた登山道は次第に険しくなり、静けさが増してきた。
そんな時、悠太はふっと、不気味な感覚に襲われた。
道の端に、古びた標識が立っていた。
「通行禁止 死の沼」と書かれていた。
仲間たちはその標識を無視し、「こんなの関係ないだろう」と言って先に行ったが、悠太は心のどこかで不安を覚えていた。

さらに奥に進むと、森の中にぽっかりと空いた場所が現れ、そこには確かに「望みの池」があった。
池の水面はまるで鏡のように静かで、周囲の木々が映り込んでいた。
悠太は池の前に立ち、不思議な感情に浸った。
「ここで望みを叶えてもらえるなら…」と強く願った。

その時、悠太の目の前で水面が揺らいだ。
彼は驚きとともに目を凝らした。
池の中から不気味な光が放たれ、悠太は幻想的な影が浮かび上がるのを見た。
それは、彼自身の未来の姿だった。
笑顔の悠太、その周りには彼の友達がいて、楽しげな姿を浮かべていた。

「望みが叶うのか?」という期待の中、悠太はその姿に魅了され、手を伸ばして水に触れた。
しかし、その瞬間、目の前に広がる景色が一変した。
池の水が一瞬のうちに濁り、不気味な声が響き渡った。
「お前が望んだ未来は、ただの幻だ。何も気付かぬまま、時を超えて迷い続ける。お前の未来は、ここで死ぬことだ。」

悠太は驚愕し、後ろを振り返ろうとした。
だが、彼の友達の姿は既に消えていた。
山の冷たい風が彼の心に冷たく響き、恐怖が襲ってきた。
「助けて!」と叫ぶが、声は木々に吸い込まれ、誰も彼を助けることができなかった。

混乱の中、悠太は次第に意識が遠のいていき、やがてgroundが沈み込んで彼を包み込んだ。
悠太が目を覚ました時、彼は再び池の側に立っていた。
周囲は静まり返り、どこにも彼の友達の姿は見えなかった。

その池は、彼の願いを待ち続けているかのように、ゆっくりと月を映し出していた。
悠太はそこで、ただ一つの望みに気付いた。
「一度失った希望は、取り戻すことができない。」その言葉が彼の心を貫いた瞬間、彼の周りには死の影が忍び寄っていた。

悠太はそこで永遠に時間を漂い続け、欲望と未練の渦の中で迷い続けるのであった。
山の中に生き続ける彼の望みは、もう決して叶うことないのだと。

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