「命の写し影」

徳は、小さな町に住む平凡な高校生だった。
彼の日常は、友人たちと遊び、勉強し、時には恋愛の悩みを抱えるようなものだったが、彼には密かに気になることがあった。
それは、自分の命の未来を写し出すという噂の存在だった。
町の古びた神社には、特別な「写真」を撮ることができる不思議なカメラがあると言われており、それを手に入れた者は、その写真を通じて自分の運命を知ることができるというのだ。

ある日の放課後、友人たちと神社へ遊びに行くことになった。
その時、ふと「命の写し」を知る徳の心に好奇心の火が灯った。
友人たちにその話をすると、皆は興味を持ち、神社でカメラを探すことにした。
そして、その時彼らは、まるで運命に導かれるかのように神社の奥へと進んでいった。

神社の奥には、朽ちかけた社が立っていた。
そこには、おそらく昔の祭りで使われていたのだろう、ぼろぼろのカメラが置かれていた。
しかし、なぜかそのカメラからは、不気味な光を放つストロボが感じられた。
徳は、友人たちが周りでわいわいと話す声を背に、そのカメラを手に取った。

「これが噂のカメラか…」徳は少しドキドキしながら、カメラのレンズを自分に向けた。
友人たちが「撮れ、撮れ!」と促す声が聞こえ、その瞬間、徳は撮影ボタンを押した。
フラッシュが光り、彼の視界は一瞬にして白くなった。
目が覚めたとき、彼の前には、まるで生命の記録のような一枚の写真が落ちていた。

その写真には、不安げな表情の徳が映っていたが、彼の後ろには何かがうごめいている様子が写し出されていた。
それは影のように思えたが、明確な形は見えなかった。
見れば見るほどその不気味さが心の奥を刺した。

「どうしたの、徳?」友人の一人が心配そうに声をかけた。
徳は不安な気持ちを隠し、笑って見せた。
「大丈夫、何でもないよ。」しかし、その写真を見た瞬間から、何かが彼の心に埋め込まれたように感じていた。

数日後、徳の周囲では、奇妙な現象が起こり始めた。
彼の身近な人々が次々と不吉な出来事に巻き込まれていくのだ。
友人が自転車で転ぶ、家族が怪我をする、さらにはペットが行方不明になるなど、次々と影響が及んでいった。
徳は「これが命の写しの影響なのか?」と考え、自分の持つ写真と向き合った。

ある晩、徳は不安な気持ちを抱えたままその写真をじっと見つめていた。
その瞬間、影が写真の中で動くのを感じた。
「それはこれからの未来を示すものだ」と、どこからともなく声が囁くように響いた。
その瞬間、徳は身震いした。

影が何かを誘い込むように感じ取り、彼をその不気味な運命へと廻り込ませようとしているのだ。
徳は選択を迫られた。
まだこの命を守ることができるのか、あるいはその運命に身を任せるのか。

「私の命を取り戻せるかもしれない…」徳は心の中で自問自答し、影に立ち向かう決意を固めた。
折しも、カメラの光が再び彼の意識を引き込んだ。
「合うべきか、帰るべきか」という問いが心の中で響いていた。

意を決した徳は、再度神社へと向かった。
彼はその場所で、影に包まれたカメラと向き合い、命の真実を知るための決断をするつもりだった。
「選択によって過去を変えてみせる」と。
土の上で深呼吸し、一歩を踏み出した時、影は彼を歓迎するように囁きかけた。

それは、彼の運命を示すものだった。
命を賭けたその選択こそが、新たな未来を切り開く鍵となることを信じて。

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