ある日のこと、大学の生物学研究室で行われた人体実験が、予期せぬ恐怖を引き起こした。
研究に没頭している同級生の小林、田中、そして鈴木の三人は、死体の解剖実習を通じて体の構造を学ぶために、普段とは異なる特別な実験を行うことになった。
その時、教授が持ち込んだのは、実験用の遺体ではなく、驚くべきことに、今でも生きているかのように見える不気味な部分だった。
それは、特定の原因で切断された人間の手だった。
教授は、「この部位を使って、神経の反応を観察する。生命の中でも特に神秘的な側面だ」と語り、興奮した表情を浮かべた。
しかし、三人の心の中には、徐々に不安が広がり始めた。
実験が進むにつれ、ついにその手の中から異様な現象が起こり始めたのだ。
小林が近づいて観察をしていると、手が不気味に震え、指が自分に向かって伸びてくるのを目にした。
「こ、これは本物の手なのか?」と震える声をあげる小林。
田中と鈴木も彼の様子を見て恐れを抱いた。
「やめよう、こんなことを続けるのは危険だ!」田中は声を上げ、鈴木もその意見に同意した。
しかし、小林はその手に興味を持ち続けていた。
「でも、これが実際に生まれる現象なら面白いと思わないか?」彼は半ば興奮しながら手に触れ、その感触を確かめようとした。
その瞬間、手が強く握られたかのように感じた。
それから数分後、一層異様なことが起こった。
目の前でまるで生きているかのように手の指が動き出し、周囲の空気が変わる。
鈴木が言った。
「実験室の温度が下がっている気がする…。この手が何かを呼び寄せているのかもしれない。」その言葉の通り、薄暗い研究室の中で、恐ろしい気配が漂い始めた。
「近くに誰かがいる!」小林が声を上げると、田中は背後を振り返った。
すると、部屋の隅にぼんやりとした影が現れ、その姿は不気味に揺れていた。
「これが…実際に起こっている現象なのか?」と、鈴木が恐れを抱きながら呟いた。
影は徐々に形を成し、まるで何かの存在がそこにいるように思えた。
「この部位が何かを引き寄せているのかもしれない…」小林の声は、恐怖を隠せないほど震えていた。
影は、まるで彼らを見つめ返すように、じっとこちらを見ている。
恐怖から逃れたい一心で、田中は「もう離れよう!」と叫び、全員が一斉に出口へと走り出した。
しかし、逃げる途中で小林がふと立ち止まる。
「手が…手が呼んでいる。この現象を知りたい!」彼は再び戻ろうとした。
その瞬間、影が彼の方へと一歩近づいた。
「頼む!来ないで!」田中が必死に叫んでも、小林は止まらなかった。
そして、恐ろしいことが起こった。
影はそのまま小林を引き寄せると、彼は力尽きたように倒れ込んだ。
鈴木と田中は、何が起こったのか理解できず、ただ恐れを抱きながらその場から逃げ出した。
研究室のドアを閉めた瞬間、部屋の中で小林の叫び声が響き渡った。
「助けて!私を戻してくれ!」その声が徐々に遠ざかっていくのを耳にしながら、彼らは永遠にその場所に近づくことを恐れるようになった。
それ以来、大学では人体実験が禁忌とされ、小林が消えた研究室は封鎖された。
そして、彼を呼ぶような影の存在は、誰も近づけないような深い闇の中に秘められたままだった。
実際には、彼の手の中に封じ込められた何かが、不気味に彼を待っているのかもしれない…誰もその真相を知る者はいなかった。