落ち着いた夜、星空が広がっている街外れの静かな公園。
そこには、若い女性が一人、ベンチに腰掛けていた。
名は周子。
彼女は、最近孤独感に悩まされている。
新しい職場に慣れる暇もなく、友人たちもそれぞれの生活に忙しく、周子は取り残されたような気持ちを抱えていた。
周子は、そんな孤独を少しでも和らげたいと思い、夜の公園にやってきた。
静かな環境の中、自分の思考に浸ることができる場所だった。
しかし、心の内に渦巻く不安や淋しさは拭えなかった。
彼女は無意識のうちに、周りを見回しながら思った。
人は自分と同じように感じることができるのだろうか、と。
その時、ふと彼女の目に飛び込んできたのは、暗闇の中に微かに光る何かだった。
周子は、光を追いかけるように進んで行くと、そこには古びた鳥居が立っていた。
普段は気づかないような場所に、何もない場所から忽然と現れたようだった。
興味をそそられ、鳥居をくぐってみることにした。
鳥居をくぐった瞬間、周子の周りの空気が変わった。
何かが彼女の心に感じられる。
まるで、周子の内面的な孤独が具現化したような暗い影が、彼女の背後に立っている。
振り向くと、そこには誰もいない。
その時、彼女は自分の心の闇に気づいた。
静かな夜に訪れるはずの安らぎは、なぜか混沌とした感情を掻き立てた。
それからの日々、周子はその鳥居を訪れるようになっていた。
彼女は自分自身と向き合うため、心の奥に抑えていた感情を吐き出すため、そこに足を運んでいた。
しかし、その一方で、影の存在もまた、彼女に寄り添うように,決して離れなかった。
まるで、彼女が孤独感を抱える度に、影はより近くに迫ってきたかのようだった。
ある晩、周子はいつものように鳥居を訪れ、再び心の内を語り始めた。
しかし、その時ふと感じたのは、「後」の感情だった。
過去の出来事、特に高校時代の友達との関係が彼女の心を苛んでいた。
彼女は、友達との絆を疎かにし、結果的にどうなったのかを知っている。
再び会うことのなかったあの頃の思い出は、次第に彼女の心に影を落とす。
その瞬間、影は動き、周子の肩に手を置いた。
彼女は恐怖を感じたが、その影は彼女に問いかけた。
その声は囁くようであり、温かみがある。
自分が大事にしなかった出来事を、何か大切なものと捉えることはできないのかと。
周子はその瞬間、理解した。
孤独感は自分が築いてしまった壁から来ていたことを。
周子は影の存在に導かれ、再び自分の内面を掘り下げることを決意した。
彼女は、ただ過去の失われた絆に執着するのではなく、そこから学べることも多いはずだと気づいた。
影は彼女の心の中に取り込まれていくように見えた。
何かを失ったという痛みから、今度は何かを得られるかもしれないと。
その夜、周子は静かな公園をあとにし、心に抱えていた孤独を少しだけ持ち帰った。
彼女はそれを恐れず、自分と向き合うことを選んだのだ。
これからは、亡くなった関係を悔いるのではなく、その教訓を大切にし、新しい一歩を踏み出す勇気を持つことを誓った。
影は彼女の一部となった。
孤独を抱えたまま生きるのではなく、新しい未来に向かって進む力ととして。
周子は、過去を手放すことができぬ自分を受け入れることで、前に進むことができる。
その先には、また新しい出会いが待っているのだから。