公が通う校は、楽しい思い出が詰まった場所だった影で、ただ一つの恐ろしい噂が流れていた。
それは、「学校の屋上で、何かが壊れる音がしたら、誰かが姿を消す」というものだった。
その噂は、生徒たちの間で徐々に広まり、知らぬ者はほとんどいなかった。
ある日の放課後、公は友人たちと賑やかに過ごしていたが、いつもと何かが違うことに気づいた。
昼間は明るく輝いていた校舎の廊下も、どこか陰鬱な雰囲気に包まれ、友人たちの声も少しずつ小さくなっていく。
公はその感覚にざわつく胸を抑え、気軽な会話に参加した。
だが、校舎の裏で、ふと耳に入った「キシキシ……」という音が、どこか彼の心をざわつかせた。
その音は、克服していた噂を思い起こさせるもので、公はさらに周囲を気にするようになった。
友人たちはその場から少し離れ、別の話題で盛り上がっているようだった。
公は一人、音の出どころを探ろうと決心し、校舎の裏に向かうことにした。
人影のない廊下を歩いていると、屋上からかすかに聞こえる扉の音が耳に届いた。
「カン、カン、カン」と何かが叩きつけられるような音が、冷たい風と共に漂ってきた。
恐れを感じつつも、好奇心が勝った公は、屋上に行くことを決めた。
階段を駆け上がるたびに、心臓が高鳴る。
しかし、到達した屋上のドアを押すと、突風と共に迎えられ、Cクラスの友人がバウンドして転がってきた。
公は驚いて彼を助け起こした。
「どうしたの？」と尋ねるが、友人は声も出せず、顔色が青ざめていた。
「屋上で、何かが壊れたんだ……！」
その言葉を聞いた瞬間、公の背筋は凍りついた。
彼らは噂で語られていた、消えてしまう運命の人々のことを思い出した。
何かが壊れた瞬間、誰もいなくなる。
恐怖が彼を包み込み、公は無意識に屋上の端に目をやった。
その時、目の前に見える光景が彼の心を捉えた。
眩い夕焼けの空は、徐々に暗くなり、何かが渦巻いているようだった。
そこには影のようなものが、暗闇から徐々に姿を現していた。
それは分からない何かで、無形の存在が彼らの目の前に迫ってきた。
「逃げろ！」と公が叫ぶと、友人たちは必死に階段を駆け下り始めた。
しかし、彼はその場から動けなかった。
何かに引き寄せられるような感覚が彼を襲い、背後の屋上の端に導かれていた。
まるでその存在が彼を待っているかのようだった。
気がつくと、公はゆっくりとその存在に近づいていった。
彼は恐怖と好奇心に翻弄されながらも、ただ一つ確かなのは、彼がこの場から逃げ出すことができないということだった。
そして、まるで運命に導かれるように、彼はついにその存在の目の前に立ってしまった。
「壊れかけたこの場所には、もはや生きる者はいない。あなたも、ここに還るのだ。」その声は低く、響き渡るような呪文のようだった。
その瞬間、公の意識は途切れ、周囲の景色が歪み、冷たい湿気に包まれていった。
彼の記憶が壊れていく感覚の中で、公は何かを叫んだ。
しかし、その声は無情にも消え去り、彼はその場から消えた。
数日後、校の屋上で誰かを探していた生徒たちは、公の姿が見当たらないことに気づく。
噂は真実となり、彼の名は忘れ去られた。
それ以降、学校の屋上では、夕暮れ時に微かに「カン、カン」という音が響くことがある。
しかし、誰もその音に気づくことはなかった。
ただ、一部の生徒は、自分の中に何かが欠けていることを感じ通り過ぎていく。
この校は、彼との絆を残しながら、恐怖の場所へと変わっていった。
