古い村のはずれには、誰も近づかない「終わりの間」という名の古びた蔵があった。
村人たちはそこを恐れ、近づくことすらしない。
噂によれば、その蔵には古い呪いがかけられており、何者かの亡霊が居座っているという。
ある日、若き女性、佐藤恵美は村外れに住む祖母から話を聞き、興味を抱いた。
恵美は好奇心旺盛だが、少し臆病な性格だった。
しかし、未知の世界への興味は勝り、彼女は「終わりの間」へと足を運ぶことに決めた。
夕暮れ時、薄暗くなる中、恵美は蔵の前に立った。
建物は年老いた木材で組まれ、周囲の草木はどこか不気味に絡みついていた。
彼女はドキドキしながらも、心の奥で高まる期待感を感じていた。
釘で留まった扉は錆び付き、力いっぱい押すとギギと不気味な音を立てて開いた。
蔵の中は静寂が支配していた。
埃だらけの床には、長い間人が入らなかったことを物語るように、無数のクモの巣が張り巡らされている。
そして、奥には古びた棚があり、壊れた器や意味不明な呪具が並んでいた。
恵美はその不気味な雰囲気に飲まれそうになりながらも、興味を持って棚に近づいた。
すると、目に留まった一つの器具が、彼女の心を引き寄せた。
それは古い木製の箱で、繊細な彫刻が施されていた。
「これが何だろう?」恵美は思わず手を伸ばして触れてしまった。
その瞬間、蔵の空気が凍りつくように感じた。
彼女の手から不思議な感覚が伝わり、背筋がゾッとした。
古びた箱がひび割れ、何かが封印されたような物音と共に開かれた。
瞬間、怨念のような声が耳元で響く。
「終わりを迎えよ…」
驚いた恵美は、慌てて箱を放り出した。
それと同時に、蔵の中が一瞬真っ暗になり、彼女は何かに掴まれたかのように息を呑んだ。
周りの空間が揺れ、自分の背後に何かが迫ってくる感覚がした。
恐怖に駆られた彼女は、急いで蔵を後にしようとしたが、どうしても扉が開かなかった。
その時、かすかな笑い声が蔵の奥から聞こえた。
「出られないよ、私の呪いにかかったから…」驚愕と恐怖が混ざり合い、恵美の心臓は激しく鼓動していた。
「終わりの間」には、この世に残された怨霊たちが息づいていた。
そして、彼らは決して外に出ることができないという運命を抱えていたのだ。
恵美はようやく扉に力を込め、無理やり開けると駆け出した。
外に出た瞬間、歓喜の思いが胸を満たす。
しかし、背後からはあの声が聞こえた。
「終わりはまだだ…必ず戻ってくる。」
それ以来、恵美は毎夜、夢の中であの蔵と呪いの声に囚われるようになった。
村人たちにはそのことを話さなかったが、次第に自らの中に呪いが宿っていることに気づく。
彼女の心の奥には、あの蔵の影がいつもつきまとっていた。
時は流れ、恵美は村を離れて新しい生活を始めた。
しかし、時折無性に引き寄せられるように「終わりの間」のことを思い出し、心はいつも不安でいっぱいだった。
彼女はその存在を忘れられず、命の終わりを迎える日が近づいていることを感じ取っていた。
そしてとうとう、恵美は再び「終わりの間」を訪れる決意を固めた。
自分の中に巣食う呪いを解くため、何かを知る必要があったのだ。
彼女は静かな夜、恐れを抱きつつも蔵に向かうことになった。
人々の目に、彼女は恐れられる存在になるのだろうか。
しかし、彼女はもう一度、終わりを迎えるためにその間に立ち向かうのだった。