桜井美月は、いつも明るく周りの人々を楽しませる性格だった。
しかし、そんな彼女の心には深いコンプレックスが隠されていた。
美月は、自分の外見や才能に自信が持てず、特に同じクラスの優秀な友人、田中由紀に対する嫉妬の念が日々心を蝕んでいた。
由紀は容姿端麗で成績も優秀、誰からも愛される存在だった。
ある日、美月は学校帰りに古い神社を通りかかった。
そこには「嫉妬を沈める力を持つ」と言われる小さな祠があった。
好奇心から祠に近づき、手を合わせると、心の中の複雑な感情が溢れ出し、思わず「由紀の全てを奪ってしまいたい」と呟いてしまった。
次の日、美月が学校に行くと、由紀の様子がいつもと違っていた。
彼女の笑顔は消え、目には何か暗い影が宿っている。
美月はその様子に少し戸惑いながらも、心の奥底で何か得意げな気持ちを抱いていた。
じわじわと感じる快感に、美月は気づかなかった。
時間が経つにつれて、由紀の不運が続くようになった。
急な体調不良で学校を休むことが増え、その隙に美月はクラスの中心になり、注目を浴びることができた。
彼女の中で嫉妬心が再び芽生え、「これが自分の望んだ心地よさなんだ」と思い始めた。
しかし、その喜びは長くは続かなかった。
ある晩、美月は夢の中で不思議な影に出会った。
その影は由紀と同じ顔をしていて、彼女をじっと見つめていた。
「私を奪ったのはあなた?」と影は問いかけた。
美月は恐怖を感じ、目が覚めた。
その日から、夢の中の影は毎晩現れ、徐々に美月の心に侵食していった。
影は彼女に囁き、嫉妬をより一層煽っていく。
「由紀を潰してしまえ。お前が一番輝くために彼女を排除すべきだ」と。
美月はこの気持ちから逃げられず、ついには由紀をハメようと計画を立てるまでに至った。
運命の日、美月はクラスで行われる文化祭の準備で、由紀に向かってわざと失敗するように仕向けた。
しかし、由紀は持ち前の冷静さでそれを乗り越え、逆に美月に助言を与えてきた。
その瞬間、美月は嫉妬心が猛然と襲いかかり、顔が引きつってしまった。
その直後、美月はふと影の存在を思い出し、彼女に連絡を取った。
今度は本当に何か悪いことが起きるかもしれないとの恐れが彼女の中に浸透していた。
しかし、美月はもはやそれを止めることができなかった。
影に取り込まれ、彼女は自ら進んで嫉妬心を深めていった。
文化祭の日、由紀が再びキラキラと人々の注目を集める姿に、思わず美月の心に溜まっていた嫉妬が爆発した。
その夜、美月は祠へと赴き、「由紀を私から完全に消してください」と祈った。
その瞬間、周囲は静まり返り、彼女の心の奥で何かが発動するのを感じた。
次の日、美月はうつろな目をした由紀が学校に来ないことを確認した。
何か悪いことが起こったのだろうと、不安に駆られたが、その瞬間の快感が彼女を支配した。
しかし、それと同時に、美月自身も急に体調を崩すようになり、次第に周囲から遠ざかっていった。
不思議なことに、彼女の心のどこかで、影の笑い声が響いていた。
結局、由紀は学校を辞め、美月はクラストップになった。
しかし、それは彼女にとっての真の勝利ではなかった。
影の存在が常に彼女の背後に寄り添っているように感じるようになり、心の中に渦巻く嫉妬のせいで、美月の魂までも引き裂かれてしまった。
美月は一人になり、影の中で消えていく運命に直面した。
彼女の望みは叶ったが、代償はあまりにも大きかった。
結局、嫉妬の心は最終的に自分自身をも滅ぼすことになるのだと知る由もなかった。