忌まわしき石の呪い

夏の終わり、久しぶりに親友の大輔と共に訪れた故郷の山村。
子供の頃に遊びまわった懐かしい場所だったが、その村にはいつしか不気味な噂が漂うようになっていた。
村の奥にある古びた神社には、決して触れてはいけない「忌まわしき石」があったという。
興味本位で神社を訪れた彼らは、子供の頃の記憶に浸りながらも、恐れを感じずにはいられなかった。

その日、大輔は帰り道に急に立ち止まり、何かに惹かれるように神社の方を指差した。
「あの石、見に行こうぜ」と言った。
戸惑う直樹だが、大輔の好奇心に負けてしまう。
二人は神社へ向かい、石の前に立った。
ひんやりとした空気が辺りを包み、圧迫感が彼らの心に影を落とす。

石は大きく、表面には奇妙な模様が刻まれたようだった。
大輔は興奮気味にその石に触れようと手を伸ばした。
「絶対に良いことが起こるはずだ」と言いながら、直樹は止める間もなく大輔は石に触れた。
その瞬間、周囲の空気がざわめき、耳に聞こえない声が響いた。
二人とも一瞬、寒気が走った。

「ここはそういう場所じゃないよ」と直樹は引き止めたが、大輔は興奮に取り憑かれたように笑顔を浮かべ、「何も起こらないさ」と返した。

しかし、その瞬間から二人に異変が始まった。
帰りの道すがら、大輔は何かに囚われたように言動がおかしくなり、時折視線が虚空へと飛んでいった。
直樹は不安を覚え、「大輔、何かおかしいよ」と言ったが、大輔は「なんでもない。ちょっと変な気分なだけだ」と答える。

その夜、二人は宿泊先の古い旅館に戻った。
大輔の様子はさらにおかしくなり、突然笑い出したかと思うと、次の瞬間には涙を流している。
直樹は心配しつつも、何が起こっているのか理解できずにいた。
大輔は「この村には何か秘密がある。俺はその秘密を知りたい」と言った。

彼の目が異様に輝き、直樹は恐怖を覚えた。
翌日、直樹は大輔を叱責した。
「あの石には近づかない方がいい。何かおかしいと思う」と言ったが、大輔は「お前は恐れているだけだ。俺はもっと知りたい」と、ますます石に執着する様子を見せた。

その後、何日も経たないうちに、大輔の奇行はエスカレートし、村の住人たちも次第に彼を避けるようになった。
彼の言動はどんどん変わり果てて、まるで別人のように見えた。
直樹は不安に包まれ、ついに「このままでは大輔がいなくなってしまう」と決心した。

大輔を連れ戻すため、直樹は再び神社へと足を運んだ。
彼は石に向かって大輔の名前を叫ぶが、何の反応も示さなかった。
再び耳に聞こえない声が響き、石が光り始めた。
恐怖に駆られつつも直樹は、力の源泉はこの石にあるのだと悟った。
それは未だに人々を試し、取り込もうとする恐ろしい存在だった。

決意した直樹は、石を力任せに打ち破った。
衝撃が走り、石が割れた瞬間、村全体が震え、恐ろしい声が響き渡った。
大輔の姿が消え、直樹はその声の中に彼の叫びを聞いた。
何が起こったのか理解できないまま、村を逃げ出した直樹は振り返ることなく、再び故郷から遠ざかることに。

あの忌まわしき石には、まだたくさんの秘密が眠っているのだろう。
直樹は、もう二度と戻らないと心に誓った。
大輔がそのまま忘れ去られてしまったのか、それとも他の誰かがまた同じ運命を辿るのか。
直樹は、その村の不気味さと恐怖を一生忘れることができなかった。

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