落ちた岩場の奥にある、長い間忘れ去られた神社があった。
その神社は、周りの自然と一体化するかのように古びており、その神々しさは人々を引き寄せるものがあった。
しかし、近づく者はいなかった。
なぜなら、そこには恐ろしい伝説があったからだ。
ある日、大学生の佐藤信一は友人の山田直子と共に、肝試しをすることにした。
信一は冒険心と右に倣えの好奇心に駆られており、直子は彼を止めることなく付き従った。
二人は神社に足を踏み入れたが、裃のように黒い雲が空を覆い、夕暮れが近づくにつれ、不気味な空気が漂ってきた。
神社の中に入ると、古びた祭壇が目に入った。
その祭壇には、不気味な顔をした石像が置かれており、まるで人を見つめているかのようだった。
信一はその石像に魅了され、無意識のうちに近づいて行った。
「信一、あまり近づかない方がいいよ。」直子は不安そうに言った。
しかし、信一はその声を無視した。
そして、石像の前に立って、ふと手を伸ばした。
瞬間、石像が眩い光を放ち、その光は信一の額に潜り込んでいった。
信一は目を閉じて暗闇に飲み込まれ、自分の内側で何かが蠢いているのを感じた。
彼の心には、過去の記憶と恨みが入り混じり、彼を支配し始めた。
「お前は私を迎える者か?」その声は信一の中から響いてきた。
驚愕し、彼は後退りする。
しかし、その瞬間、彼の背後から何かが迫っているのを感じた。
振り返ると、恐ろしい顔つきの女性の霊が浮かび上がっていた。
「私の恨みを知るがいい。」彼女の眼差しは冷たく、信一は恐怖に震える。
その霊は、自身の呪いを解くために新たな犠牲を求めていたのだった。
「お前が私を呪った女なのか?」信一は叫んだ。
すると霊は頷いた。
「私は、かつてこの神社で神に仕えていた者。しかし、裏切り者たちによって命を奪われた。そして今も、この地に縛られ、復讐を望んでいる。」
直子は恐怖で身動きが取れなかったが、信一を助けるために名乗り出た。
「彼を解放して。私が代わりに呪いを受ける。」そう言った瞬間、霊の視線が直子に向けられ、彼女の身体が冷たくなった。
その瞬間、信一は直子が持つ強い意志に気づいた。
「直子、お前はやめろ!」彼は叫んだが、その声は彼女の耳には届かない。
霊は直子の中に侵入し、呪いを引き受ける契約を結ぶ。
途端に、直子は目を見開き、顔は灰色になった。
信一は心の中でどうしようもない無力さを感じ、命をかけてでも彼女を助ける決意をした。
「私はお前の呪いを受け止める。直子を返してくれ!」と叫んだ。
霊は信一の心の中に共鳴し、過去の痛みを分かち合うことにした。
「いいだろう、私の呪いを受け継げ。だが、あなたには代償が必要だ。」その言葉が響き渡ると、信一は全てを感じた。
痛みと苦しみ、恨みと呪いが彼の中を流れ込んでいく。
直子は意識を失い、信一はその光景に耐えることができなかった。
彼は、共にこの闇を生きていくことを決意した。
果たして、彼はその豊かな過去に抱えた深い恨みを呪いとして受け入れ、直子を救ったのだ。
神社を後にした二人は、永遠に繋がることになってしまった。
変わり果てた運命が二人を待ち受けていることを知らずに。
彼らの魂は、この地方の闇に新たな「讐」を生む存在として、今も生き続けているのだった。