小さな村の一角に、古びた図書館があった。
そこは知識の宝庫でありながら、どことなく不気味な雰囲気を醸し出していた。
新しい本は一冊も入れられず、壁にかかる本は全て埃まみれで、誰も足を運ばぬ場所となっていた。
村人たちは、古い本のページをめくる音が聞こえると「また誰かが行っている」と噂していたが、実際には誰も心当たりがなかった。
ある日、中村怜子という高校生がその図書館に興味を抱き、友人たちに誘われて訪れることにした。
怜子は読書が好きで、特に古い本に魅力を感じていた。
彼女は学校の授業でも、文学に関する課題を出されることが多く、また何か面白い話を見つけたいと思っていた。
彼女の友人、佐藤亮太は「こんなところ、オカルトだって話題になるかもしれない」と半分冗談で言った。
怜子はその言葉を耳にしながらも、この不気味な場所にどこかワクワクする気持ちを抱いていた。
図書館の中に入ると、薄暗い空間に肩を寄せ合うように、古い本が所狭しと並んでいた。
彼女は興味を持ち、手当たり次第に本を引っ張り出し、その内容を確かめようとした。
その時、ふと気づいたのは、一冊の本の表紙に書かれた文字だった。
「果たし状」——それは、怜子の心に何かを訴えかけるような、深い響きを持つタイトルだった。
怜子はその本を手に取り、ページをめくる。
すると、中には無数の文字がびっしりと書かれていた。
だが、彼女が驚いたのは、その中に見覚えのある名前が書かれていることだった。
彼女の友人たちの名前、そして自分自身の名前まで記されていた。
驚いた怜子は、他のページをめくると、あるフレーズに目が止まった。
「実を開く者、果たし状を全うせよ。さもなくば、無へ至る。」その文字は血に染まったような赤で書かれており、恐怖が彼女の心を支配した。
「こんなことはおかしい。誰が書いたの?」怜子は動揺し、周りの友人たちに叫んだ。
だが、図書館の雰囲気は変わらず静寂に包まれていた。
怜子は恐る恐る本を後ろに閉じ、他の友人たちに目を向けると、皆が彼女を見つめているのに気づく。
しかし、彼らの目には何か異質なものが宿っているように感じた。
「どうしたの?」と尋ねる怜子。
すると、一人の友人が微笑む。
「怜子、どこか面白いことが書いてあった?」彼女は心中に不安が渦巻くのを感じた。
次の日、怜子は夢の中で不思議な声に導かれていた。
その声は「実が開かれる時が来る」と告げていた。
怜子は村の伝説とその声の意味を紐解こうと図書館に戻った。
しかし、再びその本を見つけることはできなかった。
代わりに、別の場所にその本は現れていた。
そして、そのページはともに自分たちの生活が変わり始めていることを物語っていた。
彼女の周囲で次々と異常な現象が起こり始めた。
友人たちが次第に怯えて言葉を失い、誰も声を発しなくなっていく。
怜子は「果たし状」が何かの試練であることを理解し、解決策を見つけるべく奔走する。
しかし、図書館にはもはや彼女が求める答えはなかった。
誰もが無邪気に笑っていた日常が、彼女の目の前で崩れ去っていくことに焦りを感じていた。
数日後、怜子は恐怖と絶望の中、自らの意志でその本を再び映し出すことを決意し、村の廃墟となった図書館に向かう。
だが、そこにはもはや本は残っていなかった。
その瞬間、彼女は不気味な冷気を感じ、振り返ると古い声が彼女の耳元で囁いた。
「実を開く者、果たし状を果たせ。無に至ることはない。」
怜子は、全てを受け入れることによって、この果たし状の意味を知る時が来ると静かに感じた。
彼女の心に残った言葉は、果たして何を意味していたのだろうか。