高校の夏休み、静まり返った田舎の村にある「忘れられた森」が舞台だった。
この森は、村人たちの間で忌み嫌われており、誰も近づかないようにしていた。
人々は、かつてこの森で多くの人が行方不明になったという噂を語り継いできた。
それでも好奇心が勝ってしまった数人の若者たち、特に真司と健太はその森に挑むことに決めた。
「行こう、忘れられた森を探検しようぜ!」と真司が言った。
健太は少し不安そうに「でも、あそこには何かがいるって噂だから…」と返したが、真司の勢いに押されて彼も同意した。
夕方、彼らは準備を整え、懐中電灯を手に森へ足を踏み入れた。
薄暗い森の中は静寂が支配し、微かに蝉の声が響いている。
進むにつれ、木々の間から放たれる影が不気味に揺れ、真司の心の中に恐怖が宿り始めた。
「大丈夫だよ、俺たちが何かを見つけて帰るまでは!」真司が強がりを言うと、健太は「まあ、いざという時は後戻りできるしな」と少しだけ安心した気持ちを見せた。
森を進むうちに、二人は異様な気配を感じた。
それはまるで、どこかに「何か」がいるような錯覚だった。
その時、風が吹き、木々がざわめく。
一瞬だけ真司は背後に何か大きな影が動いた気がした。
「な、何かいる!」と真司が声を上げる。
健太も恐怖に駆られ、「帰ろう、さっきのは気のせいだ」と言った。
しかし、真司は無理やり彼を引き留め、「まだ何も見ていない!もっと進もう!」と叫んだ。
結局、彼らはさらに奥へと進むことにした。
やがて一つの空き地に辿り着くと、そこには朽ち果てた小さな小屋があった。
森の奥深くにひっそりと存在するその小屋に、真司たちは惹きつけられた。
「ここに入ってみようよ」と真司が言い、小屋の扉を開けた。
中は薄暗く、何もないはずだった。
しかし、真司が懐中電灯をあてた瞬間、光に照らされた壁に異様な文字が描かれているのを見つけた。
それは、まるで生きているかのように流れるように続いていた。
文字は徐々に鮮明になり、彼らは徐々にその意味を知ることになった。
「ここには、求められる者たちが閉じ込められている…消えていった人々の魂が、この森の闇の中で彷徨っている」と書かれていたのだ。
健太は恐怖で震え、「やっぱり帰ろう、これは悪趣味な遊びだ」と真司に言った。
しかし、真司は「大丈夫、見てみよう。何もしないさ」と言いながら、その場を動こうとしなかった。
その瞬間、背後から冷たい風が吹き、彼らの周りに不気味な声が響いた。
「求める者よ、何を求める?」
真司と健太は、声の正体を追い求めようとしたが、二人の心には恐怖が深く根付いていた。
突然、周囲の視界がぐるぐる回り始めた。
「真司…!助けて…!」と健太が叫ぶと、真司は判然とした意識を失いつつあった。
彼の目の前には、闇の中から無数の影が浮かび上がり、彼を包み込んでいった。
「消えてしまえ!」という言葉が思わず口を衝いて出た。
この瞬間、彼女らの影は襲いかかり、二人の存在を包み込んでしまった。
健太の叫び声が、闇に飲まれていくのを真司は感じた。
やがて、周囲は静寂に包まれた。
小屋の中にはただ、朽ちたままの姿だけが残されている。
真司もまた「消される者」となり、その存在は忘れ去られていく。
その後、村の人々は彼らの行方を知らぬまま、記憶の奥底に森を封印するようになる。
そして、あの森の闇の中では、彼らの叫びが今も響き渡っているのだった。