「命を求める鉄路」

瑞樹は、大学の休暇を利用して、廃線となった鉄道の探索に出かけることを決めた。
興味を惹かれたのは、地元の伝説に語られた「命の鉄道」と呼ばれる廃線だった。
昔、この鉄道は名のある場所まで運ばれていたが、ある事故を機に運行を停止し、乗客の多くが行方不明になったという。

一人、瑞樹は不用意にその鉄道の起点に足を踏み入れた。
かつては賑わっていたであろう駅は、今は静寂に包まれ、残骸と化した車両が放置されていた。
緑に覆われた道を進んでいくと、心の中で不安の声が次第に大きくなっていった。
だが、探索という冒険の魅力が彼の好奇心を押し上げた。

瑞樹は、廃車両の窓から内部を覗き込むと、古びた座席が揺らめくように見えた。
恍惚な目に映る景色に、彼の足は進んでいく。
しばらくすると、ふと彼の目に映った異様な光が、前方のトンネルの奥から漏れ出ているのに気づいた。
心惹かれ進みたい気持ちと恐れがせめぎ合う。
しかし、瑞樹はそれでもトンネルへと足を進めた。

トンネルの奥、暗闇の中で光は徐々に大きくなり、静かに彼を引き寄せるように感じた。
だが、足を踏み入れるにつれ、異常な寒気が彼を襲った。
そうかと思うと、背後からは誰かの視線を感じた。
振り返ったが、そこには何もいなかった。
冷静になろうと、瑞樹は進む。

しかし、予期せぬ距離で彼の目に映ったのは、道端に立つ少女の姿だった。
彼女は鮮やかな着物に身を包み、まるで鉄道の時代から時が止まったかのようだった。
瑞樹は彼女が何者なのか興味を抱き、近づいていった。

「あなたは何を探しているの?」少女は、静かに問いかけてきた。
その声は、心の奥に響いてくるようだった。

「命の鉄道について調べに来たんだ」と瑞樹が答えると、彼女の目が一瞬光り、彼の行令を理解したようにうなずいた。
「この鉄道には、命を探し求める者がたどり着く場所。それには解かれない謎が残されているの。」

瑞樹の中で、「命」や「解」の意味がないまま、彼女の存在に魅かれていく。
少女は手を差し出し、「試しに来たの?」と尋ねた。
彼は少し戸惑ったが、気がつくとその手を取っていた。

次の瞬間、彼は謎めいた夢の中に掬い取られた。
彼の前には、かつて行方不明になった乗客たちの霊が立っていた。
彼らは無表情で、瑞樹を見つめていた。
彼の胸は締め付けられる程の恐怖に包まれた。

「お前も、私たちの仲間になりたいのか?」一人の霊が言った。
その瞬間、瑞樹は自分がこの鉄道の先で何を探していたのか理解した。
彼もまた、命を求める者の一員だったのだ。

その時、少女の声が響く。
「あなたはこの謎を解くことができる。真実が何かを学び、生きる意味を見出すこと。それがこの鉄道を自由にする鍵です。」

瑞樹はその言葉を心に刻み、彼自身の命に関わる選択を迫られていた。
運命を受け入れた瞬間、霊たちの表情が変わった。
笑顔と共に手を差し伸べ、彼に道を開けてくれるかのようだった。
「さあ、進んで。」

瑞樹は、一歩踏み込んだ。
選ばれた運命によって彼は解放され、命の行く先を見出す道へと導かれていった。
そして、彼の探求は、過去の呪縛を打ち破るための新たな旅を始めるのだった。

タイトルとURLをコピーしました