ある静かな夜、町は静寂に包まれていた。
主な舞台となるのは、長い歴史を持つ小さな神社だった。
ここには「神の夜」という伝説があり、信者が夜に訪れることで神の導きを受けられるとされていた。
しかし、その信仰は今や薄れ、神社は年々人が寄り付かなくなっていた。
主人公のラは、その神社で生まれ育った若者である。
彼は幼い頃から神社に親しんでいたが、いつしかその古い伝説を信じることができなくなってしまっていた。
彼の心の奥には、神社を訪れることで何か特別な体験ができるのではないかという淡い期待があったものの、それは次第に消え去り、ただの古びた場所として記憶に残ることとなった。
ある晩、友人たちと飲み明かした後、酔った勢いで神社の境内に足を踏み入れたラ。
彼の心には、神社の暗闇の中で何が待っているのかという好奇心があった。
しかし、彼がいつも通りの神社の風景だと思って足を進めたとき、何か異変を感じた。
風が吹き抜け、彼の耳にはかすかな囁き声が聞こえた。
それはまるで、誰かが彼を呼んでいるかのようだった。
「ラ…」その声は、彼の名前を呼んでいた。
ラは驚き、思わず立ち止まった。
周囲には誰もいない。
友人たちはとっくに帰ったはずだ。
彼は心拍数が上がり、不安に襲われたが、好奇心が勝り、声の方向へ向かうことにした。
神社の奥にある小さな祠へと進むと、そこには一枚の古い絵が飾られていた。
絵に描かれたのは、神社を守る神の姿だった。
しかし、その表情がどこか悲しげで、ラは思わずその目を凝らした。
すると、絵から放たれる光が彼の身体を包み、何かの力に引き寄せられるように祠の中へと吸い込まれていった。
彼が意識を取り戻すと、そこは全く異なる世界だった。
目の前には、神社の祭壇に祀られた神が実体化して現れていた。
神の目は強い信念を湛えており、彼に向かって語りかける。
「ラよ、かつての信仰の火を絶やしてはならぬ。お前の心に宿る信を覚まし、他者へと繋げるのだ。」
ラは動揺しながらも、神の言葉に引き込まれ、自らの心の内にある信仰を探り始めた。
彼は、友人たちとの語らいや、祖父母から伝えられた神社の歴史を思い出す。
彼らがどれほど神社を信じ、祈り続けてきたのか。
その強さを、改めて感じることができた。
信じることが、次の世代へと繋がるのだと、彼は気づいたのだ。
「私の信を捨てたのは誰だ？」神は問いかける。
「これからの時代を生き続ける者が、かつての信仰を繋いでいくのだ。それは、永遠に続くものなのだ。」
ラはその瞬間、自身の中にかつて忘れ去られていた思いを取り戻し、しっかりと神に向き直った。
「私は、この神社のために何ができるのでしょうか？」彼の声には、強い意思が込められていた。
神は微笑んだ。
すると、暗闇から光が差し込み、神社の境内が少しずつ色を取り戻していく。
神は続けた。
「お前の決意次第で、信仰の光が新たに生まれる。さあ、行け。そして新しい世代を導く存在となるのだ。」
ラは目を閉じ、心の中にある希望を抱きしめた。
自らを再生させ、信仰を復興できるチャンスを手に入れたのだ。
彼が神社へ戻ると、周囲の景色は一変した。
明るく輝く道が現れ、古びた神社は今もなお人々の心の拠り所であることを伝えているかのようだった。
その夜、ラの心には忘れられない温かな火が灯った。
信仰の強さは、永遠に続くものであるということを、彼は改めて深く理解したのだった。
それからラは、自らの心を新たにし、町の人々に神社の魅力を語り始めた。
彼の目には、希望の光が映っていた。
