彼女の名前は由紀。
あまり目立たない性格で、周囲からは存在を忘れられがちだった。
どこにでもいる普通の女子大生で、普段は彼女の趣味である絵を描くことに没頭する日々を送っていた。
しかし、彼女には一つの秘密があった。
それは、描いた絵が現実に影響を及ぼす力を持っているということだ。
ある日、由紀はふとした瞬間に思いついた絵を描くことにした。
それは、彼女自身の姿を描いた作品だった。
濃い闇の中で、彼女が何かに囲まれている、まるで自分自身が消えていくような印象を与える画風であった。
由紀はその絵を描きながら、心の奥深くに潜んでいる孤独や恐怖を具現化したかった。
彼女はその絵を、誰も見たことがないほど魅惑的なものに仕上げることができた。
だが、その絵を完成させた時、彼女の胸に変な感覚が走った。
まるで、何かが彼女の中から消え去っていく感覚だった。
しばらくして、彼女はその絵を部屋の壁に飾った。
そうすることで、自分自身を忘れないための合意を求めていたのかもしれない。
彼女はずっとその絵に向かって、独自の思いを込め続けた。
日が経つにつれて、彼女の周囲で不思議な現象が起こり始めた。
彼女の友人やクラスメートが徐々に彼女から遠ざかっていくのだ。
まるで彼女が目立たない存在になっていくようだった。
実際、彼らの会話に混ざろうと試みても、まるで透明人間のように無視されているのだ。
由紀は落ち込んだ。
何が悪かったのか自問したが、答えは見つからない。
ある夕方、由紀はふと壁に飾ってある自分の絵を見つめた。
その瞬間、何かに引き寄せられるかのように、彼女は絵の中に描かれた自分自身と目が合った。
すると、彼女は気が付く。
本当は自分がこの状況を望んでいたのだと。
周囲の人々に気にされない自分、存在しない者として生きることを選び、孤独の中で絵を描くことに没頭していたのだ。
その瞬間、彼女は心の奥底で自分との対話を始めた。
自身の存在価値、他人との関係、そして自分がどれほど犠牲になってきたのか。
由紀は自分が描いていた絵こそが、彼女の欲望を表すものであり、彼女自身を消し去ろうとするものであることに気がついた。
彼女は絵の呪縛から逃れるため、決意を固めた。
自分を消すのではなく、自分と向き合うことが必要なのだ。
彼女は描いた絵を剥がし、心の中の恐怖を解放することにした。
それは、周囲との関係を絶ち、物を捨て、心のすべての囚われを解放することだった。
次の日、由紀は新たな作品を描くことにした。
それは、彼女自身が自分を受け入れる姿を描いたもので、周囲の人々と共にいる様子を表現した。
彼女はその絵を見つめながら、もう二度と自分を消さないと心に誓った。
彼女にとっての真の自分を表現するために、彼女は立ち上がった。
絵を描き終えた後、彼女はその作品を展示するために、友人たちを誘った。
そして、彼らとの再会を果たし、新たな道を歩むことにした。
由紀はもう、誰かに消えられることを望まない。
彼女は自分を受け入れ、他人と向き合うことができるようになったのだ。
自分の心の闇と向き合い、自らの存在を求める旅を始めた彼女は、今度こそ自分の足で立つことができた。