夏のある日、友人たちと一緒に山へキャンプに出かけることになった。
参加者は中村、佐藤、そして私の三人。
楽しい気分で満ち、山の空気を楽しみながら進む。
しかし、夜が近づくにつれ、山の静寂が私たちを包み込み、徐々に不安な気持ちが芽生えてきた。
キャンプの準備を終え、焚き火を囲んでいると、佐藤がふと呟いた。
「ねえ、少しこの近くを探検してみない?この山には、昔から『目』が現れるという言い伝えがあるらしいよ。」
無邪気に笑いながら、私たちはその話を楽しんでいた。
けれども、心の奥底には、何か得体の知れないものへの恐れが芽生えていた。
中村が「じゃあ、ちょっとだけ探検しようよ」と言い出し、私たちは意を決して周辺を散策することにした。
山道を進んでいくと、確かに静かな夜の風が流れていたが、その静けさの中に何かが潜んでいるような感覚を覚えた。
ふと、私の目の前に一つの岩が見えた。
その岩には、何か不気味な模様が彫られている。
まるで、無数の「目」のような形が連なっているのだ。
驚きと興味を抱きつつも、私たちはその岩に近づいた。
その瞬間、岩の模様がほんの少し光を放ったように感じた。
中村が「これは何だろう?」と言いながら、手を伸ばそうとして、その瞬間、彼の手が岩に触れた。
次の瞬間、世界が一変した。
周囲の景色がぼやけ、中村の表情が歪んでいく。
目の前に浮かぶ「目」の模様が、まるで生きているかのように動き出し、私たちを見つめ返している。
私たちは恐れおののき、最初に感じていた安らぎは一瞬で消し去られた。
パニックに陥りつつも、私は中村の手を引こうとした。
でも彼は動かない。
目に妖しさが宿り、その目が彼を捕らえているようだった。
佐藤は周囲を見渡し、逃げるための道を探そうとしている。
「早く逃げよう、戻ろう!」と叫ぶが、私の声は彼には届かない。
そのとき、中村が「ああ、目が……」と呟いた。
彼の声は震えており、まるで失われた何かに怯えているようだった。
私はその様子を見て恐怖に駆られた。
「中村、戻ろう!」もう一度叫ぶが、彼は微動だにしない。
そのまま時間が経過するのか、私達の目の前に立っていたはずの中村の姿が、徐々に消えていく。
薄気味悪い目の模様に引き込まれるように、彼はその岩に飲み込まれるかのように消えていった。
そして、私たちの目の前にはただの岩だけが残されていた。
恐怖に震えながら佐藤と一緒に山を駆け下りた。
どうにかしてキャンプサイトに戻り、仲間が無事であることを願った。
しかし、戻ってみると、キャンプの場所には誰もいない。
明るいライトも extinguished し、静寂が支配していた。
さらに恐怖が私を襲い、佐藤の姿も見失っていた。
私は意を決し、再びその岩のところへ戻ることにした。
心臓が高鳴る中、幽霊でも見たかのように恐れながら進む。
目の前に現れた岩は、依然としてただの岩として光を放っていなかった。
しかし、近づくにつれて、不気味な冷気が私を包み込み、全身が凍りついた。
「中村……佐藤……」と呼びかけるが、返事はない。
私も彼らと同じ運命を辿るのだろうか。
何も思い出せない、ただ恐れだけが広がっていく。
最後に目の前の岩を見つめ、消えた友人たちのことを思い浮かべる。
その瞬間、周囲が暗闇に包まれ、私もまた「失われた」存在になる運命に取り込まれていった。
月明かりの下、再び静かな山が広がり、目に見えない何かが、静かに私たちの行く末を見つめているかのようだった。