ある静かな町の外れに、ひっそりと佇む古びた屋敷があった。
その屋敷は、人々に「亡霊屋敷」と呼ばれ、近寄る者はほとんどいなかった。
かつては多くの家族が住んでいたが、ある夜、突然の火事によって一夜にして壊滅したという。
屋敷の主だった老人が、火に包まれる運命とは裏腹に、何故か生き延びることができたという噂が絶えなかった。
その老人は、街の人々に疎まれ、敵視されていた。
そして火事の後、屋敷に一人で住むようになると、ますます人々を恐れさせる存在となった。
しかし、間もなく彼を見かける者もいなくなり、さらなる噂が生まれた。
「彼は今、屋敷の中で亡霊たちと共に過ごしているのだ」と。
数年後、私たちの仲間である青年・武志が、屋敷の真相を確かめるために立ち上がった。
武志は言葉巧みに仲間たちを説得し、共に屋敷に向かうことになった。
彼は大胆にも、夜を選び、懐中電灯だけを持って屋敷の扉を叩いた。
仲間たちは恐怖に震えながらも、好奇心が勝り、屋敷の中へ踏み込んでいった。
屋敷の中は薄暗く、埃だらけの家具が無造作に散乱していた。
武志はリーダーとして、皆を先導した。
しかし、薄暗い廊下を進むうちに、冷たい風が吹き抜け、急に重苦しい空気が彼らを包み込んだ。
武志は何かを見たような気がした。
それは、老人の幽霊だった。
突然、老人の声が響く。
「何故ここに来た、中に入ってはいけないんだ」と、威圧感を持つその声は、仲間たちを振るわせた。
しかし武志は怯まなかった。
「あなたの真実を知りたい」と独り言のように呟いた。
その瞬間、屋敷の中が闇に包まれ、まるで敵に囲まれたかのように感じた。
武志が一歩踏み出した瞬間、周囲の家具が突然動き出し、仲間たちを襲うかのように猛然と寄せ集まった。
仲間たちは必死に逃げたが、次々と吸い込まれるようにその場から消えてゆく。
武志は彼らを救おうとするが、彼の足元にあった壷に足を引っ掛け、次の瞬間、屋敷の奥深くへと飲み込まれてしまった。
彼は気がつくと、まるで異次元に迷い込んだような場所に立っていた。
そこには、屋敷の過去が浮かび上がる景色が広がっていた。
人々の悲鳴や、炎に焼かれる音が耳に響く。
彼はそれを見つめながら、真実を知った。
この屋敷は、彼が想像した以上に重い怨念に満ちていたのだ。
最終的に武志は必死になって逃げ出した。
しかし、家の出口は見つからず、むしろ迷宮のような廊下が続いていく。
屋敷の亡霊たちが彼を阻止しようと追いかけてくる。
武志は、恐怖と共に命の危機を実感し、全力で逃げる。
その瞬間、彼はふと振り返り、彼らが自分に対して何を感じているのかに気が付いた。
それは、憎しみではなく、ただ孤独だった。
武志は胸に痛みを覚えたが、彼らを助ける術はなかった。
彼は屋敷の出口を見つけ、命からがら逃げ出す。
そして、後ろを振り返ると、屋敷はただの廃墟となっているのだ。
彼の仲間たちは戻ってこなかった。
しかし、武志は一つだけ約束した。
二度とこの屋敷には近づかない、と。
その場所が持つ深い闇を理解した彼には、もはや入る勇気はなかったのだ。
次第に彼の心には、恐怖ではなく、深い悲しみが根付いていった。