「消えた友情の行方」

創は、大学生活の合間に多くの友人を持ち、その中でも特に親しい友人の一人、正樹との関係を大切にしていた。
二人はいつも一緒に遊び、勉強をし、時には夜遅くまで語り合った。
そんな絆を持つ彼らでしたが、ある夏の夜に起きた出来事が、創の心に暗い影を落とすことになるとは夢にも思っていなかった。

その晩、創と正樹は友人たちと肝試しに行くことにした。
舞台となったのは、村はずれにある廃墟となった古い神社。
噂では、神社の奥には昔、悪霊が封じられているとのことだった。
「どうせただの噂だろう」と、創は正樹に笑いながら言った。
正樹も興味を示し、二人はその薄暗い境内へと足を踏み入れた。

神社に足を踏み入れると、他の友人たちの声は次第に遠くなり、静けさが包み込むように変わっていった。
創は不安を感じ始めたが、正樹が隣にいることで心強くなった。
根拠のない恐怖感を振り払うため、二人は冗談を言い合いながら、神社の奥へ進んでいった。

しかし、神社の最深部にたどり着いた瞬間、何かが変わった。
涼しい風が吹き抜け、正樹が何かを感じ取ったように足を止めた。
その時、創もまた、心の奥に異様な重さがのしかかるのを感じた。
「戻った方がいいんじゃないか?」と創は提案したが、正樹はあくまで興味を示し、神社の更に奥へ進もうとした。

「ちょっと待って、正樹!」創が叫んだ。
しかし、その声は正樹には届かず、彼はどんどん奥へと進んでいった。
創は不安でいっぱいになり、意を決して正樹の後を追った。
そこには小さな祠があり、古びた像が、一見何もない空間に佇んでいた。
創はその場に留まることができず、正樹に振り返って呼びかけた。
「正樹、もうやめようよ!」

その瞬間、信じられない現象が起きた。
祠の前で正樹が青白い光を浴び、彼の身体が徐々に浮かび上がっていく。
創は目を疑った。
正樹の表情は驚愕と恐怖に満ち、彼が何かに取り込まれそうになっているのを見た。
その時、創は心の奥から渦巻く恐れと共に、正樹との絆が断たれることを強く感じた。

「正樹!お願い、戻ってきて!」創は必死に叫んだ。
その声は、今までの友人であり、兄弟のような存在であった正樹に向けたものだった。
絆を失いたくなくてたまらなかった。

その瞬間、正樹は不思議な力に吸い寄せられるように、祠から逃れようと奮闘した。
だが、次第にその力は強まり、創はもがく彼を見ていることしかできなかった。
「助けて、生きているんだ、正樹!」と心の中で叫びながら、自身もまたその場から逃げ出せなくなっていた。

一瞬、神社の周囲に暗闇が広がり、創は我を忘れて正樹に手を伸ばした。
すると、信じられないことが起きた。
正樹は小さな光の中へと吸い込まれていく。
創はその瞬間、正樹が一緒にいることの重要性を全身で実感した。
「いつまでも一緒だよ!」と、最後の力を振り絞って叫んだ。

正樹はその声を聞いたかのように、微かに笑みを浮かべた。
その直後、光は一瞬で消え、正樹の姿は見えなくなった。

神社から逃げ出した創は、涙が止まらなかった。
彼は正樹との絆を、決して忘れることはないと心に誓った。
しかし、内なる深い闇が彼を苦しめ続けていた。
「彼は本当に生きているのだろうか?」その恐れと後悔は、創をいつまでも解放しなかった。
怪談のような出来事が心に刻まれ、彼は正樹の声を、友との絆を今も求め続けているのだった。

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