落ち葉が舞い散る秋の日、佐藤健太は町外れの公園を散歩していた。
いつもは賑わっているはずの公園も、今日は静まり返っていた。
健太はふとベンチに腰掛け、周囲の落ち葉を眺めていた。
その時、何か光るものが目に留まった。
それは、落ち葉の下に埋もれた古びた小箱だった。
好奇心に駆られた健太は、その小箱を手に取った。
箱は重く、錆びついた金具が所々外れかけている。
慎重に蓋を開けると、出てきたのは古い手紙と、一つの小さな人形だった。
手紙には、次のように書かれていた。
「この人形は、失った人を思い出し、願いを叶える力を持っています。しかし、それには代償が伴います。決して心の底から望んでいないことを託さないでください。」
健太は不気味な気配を感じつつも、人形を握りしめた。
彼は数年前、大切な友人である拓也を交通事故で失っていた。
友人との思い出を思い出しながら、健太は願いを託けてみることにした。
「拓也にもう一度会いたい」と心の中で呟いた。
その夜、健太は不思議な夢を見た。
夢の中で拓也が現れ、彼は微笑みながら手を振っていた。
健太は嬉しさを感じ、その場に飛び込んでいく。
しかし、その瞬間、拓也の表情が変わり、血のように赤い涙を流し始めた。
驚愕した健太は目を覚まし、夢が悪夢であったことに気づく。
日が経つにつれて、健太は村の人々の困惑と恐怖を目にするようになった。
小動物が姿を消したり、急に体調を崩す住民が増えたりした。
そして、彼の元に一通の手紙が届いた。
そこには、「私の両親が、あなたに会いたがっています。私を返してくれ」という友人の言葉があった。
その日から、健太は徐々に異常な現象に悩まされるようになった。
寝汗に悩まされ、食欲も失い、友人の声が頭の中で繰り返し響くようになった。
「返してくれ」と叫ぶ声は、次第にエコーのように彼の耳に届く。
とうとう彼は、もう一度人形を手に取り、蓋を開けた。
その瞬間、暗い影が彼の周りに集まってきた。
その影は、拓也の姿を持ち、彼に向かって手を伸ばしてきた。
恐怖と懐かしさが彼の心を揺さぶった。
どうすればいいのかわからないまま、彼はただ、拓也の名前を呼び続けた。
「拓也!お願い、返事をして!」
すると、突然空間が歪み、健太は取り返しのつかない選択を迫られる。
人形が発する微かな光が、健太の心の奥へと吸い込まれていく。
彼は泣き崩れ、「もう一度、拓也に会いたくない」と自覚した瞬間、彼の思いが通じた。
暗闇が晴れ、瞬間、拓也の影は消え去った。
彼はただ、ぽっかりと空いた人形を見つめ、深い安堵感に包まれていた。
翌朝、健太は公園に戻り、小箱を元の場所に埋めることにした。
友人との思い出を大切にしつつ、彼の心の奥には、新しい決意が根付いた。
失った者との再会を望むことは、時としてさらに重い悲しみを呼び込むことを、彼は実感した。
健太は次第に、友人の温もりを心の中に留め、真の生きる道を見つけていくのだった。