原にある小さな町は、穏やかな日常が流れる場所だった。
静かな町に、一つの噂が広がっていた。
それは、ある物が日中の光にさらされると、消えてしまうという不思議な現象についてだ。
特にその物が、特定の人が触れたものであった場合、話はより恐ろしいものになると言われていた。
ある日、町に住む高校生の佐藤健一は、友人たちと一緒に原の古い神社を訪れた。
神社にはこれといった特徴はなく、むしろ時の流れに忘れられたような場所だった。
しかし、そこには一つの小さな祠があり、その中には古びた箱が収められていた。
友人の中の一人が、その箱に触れようとした時、「それはやめろ」と健一が言った。
「なんで?大丈夫だろう」と友人が笑ったが、健一の心には不安が広がっていた。
とりわけ、その箱が何らかの封印をしているのではないかという気持ちがあったからだ。
しかし、友人は興味をそそられ、そのまま箱に手を伸ばした。
その瞬間、真昼の太陽の光がその箱に差し込んだ。
すると、箱の周囲で周囲が一瞬白く光り、次の瞬間、目の前にあったはずの箱が、まるでかき消されるように消えてしまった。
友人たちは驚き、思わず後退した。
「なんだ、今の?」一人が口を開くと、他の友人たちも同様に言葉を失っていた。
健一は不安を抱えつつも、「これには何か意味があるに違いない」と考えた。
友人たちは腑に落ちない様子で、その場を離れた。
それから数日後、健一はその出来事がずっと頭から離れなかった。
「何があの箱を消したのか」そのことを考えながら町を歩くと、街の人々もまた、最近の様子がおかしくなっていることに気づいていた。
特に、日中に目撃された物や人が次々と消えるという不気味な話が立ち始めた。
健一は、自分が触れた箱のことを気にかけ始めた。
あれは夢だったのか、それとも何かが本当に起こったのか。
彼はその日、図書館に行き、古い文献や本を読みあさった。
消えた物についての伝説や、過去の儀式に関する記録を追いかけた。
すると、伝説の中には「消えたものは、それを触れた者の運命と結ぶ」という内容が含まれていた。
このことが、健一をさらなる不安へと追い込んだ。
なぜなら、彼の友人があの箱を触ったことで、何か悪いことが起こるのではないかと感じたからだ。
そして、案の定。
数日後、友人の一人が突然姿を消してしまった。
健一は心がザワつくのを抑えられない。
「次は自分かもしれない」という思いが、まるで密室に閉じ込められたように彼の心を締め付けた。
不安に駆られた健一は、自分の運命を切り開くため、元の神社に戻ることを決意した。
彼は神社に向かい、あの日の箱が消えた場所に立った。
そして、何が残っているかを確かめようと思った。
周囲は静まり返り、まるで時間が止まったかのようになっていた。
健一は強く心の中で願った。
「この恐怖から解放されたい」と。
その瞬間、一筋の光が彼を照らし、まるで誰かが目の前で微笑みかけるかのように感じた。
健一はその光を追いかけるように、箱があった場所を離れ、町へと足を運び始めた。
しかし、町に戻る途中、彼は何かが自分を見ていることに気づいた。
振り返ると、どこか見覚えのある顔がこちらを向いていた。
友人だった。
しかし、その表情は無表情で、まるで何かを失ったかのように虚ろだった。
「お前、どうしたんだ?」健一は問いかける。
しかし、友人は言葉を発することなく、ただ彼に向かって手を差し伸べてきた。
健一は恐怖を感じ、逃げ出そうとしたが、足が動かなくなった。
目の前の友人が消えてしまうことを最近の出来事に重ね、逃げることができずにいた。
その瞬間、健一の目の前で町中の光が一瞬消え、その後静けさが訪れた。
周囲は異様な静寂に包まれ、やがて彼はその世界に閉じ込められたような気持ちになった。
彼が見たものは、すべてが消えていく様子だ。
日常が、日光の中で全てかき消されていくのを感じた。
健一は、あの箱があの助けを手に入れることができなかったことに思いを馳せつつ、恐怖に苛まれながら消えていくのだった。