田舎町の小さな集落「多古村」。
そこには、古くから語り継がれる不気味な言い伝えが存在していた。
それは、村の近くにある「逆神社」と呼ばれる神社にまつわる恐ろしい呪いの話であり、この神社に足を踏み入れると、日常の理は逆転し、全てが反転してしまうというものであった。
村人たちは、そんな呪いを恐れ、神社の近くには近づかないようにしていた。
ある日、村に住むごく普通の少年、健太は友人たちと一緒に遊んでいると、その話を耳にした。
「逆神社に行ったら、すべてが逆になっちゃうんだって!」と、友達の光太が言った。
好奇心旺盛な健太は、その話を聞いていてもたってもいられず、仲間たちに向かって言った。
「本当なのかな?行ってみようよ!」
最初は少し戸惑った友達たちも、結局は健太の熱意に押されて、逆神社へと向かうことにした。
夕暮れの薄暗い道を進むにつれ、不安が胸を占め始めたが、彼らは若さと冒険心にあふれていた。
神社が見えてくると、背筋が凍るような冷たい風が彼らを包み込んだ。
木々がざわめき、鳴り響く音と共に、どこからともなく不気味な気配が漂ってきた。
神社の鳥居をくぐり、境内に入っていくと、静寂が彼らを包んだ。
まるで時間が止まったようだった。
「これが逆神社か……」と、健太がつぶやいた。
彼はその美しさと恐ろしさに心を奪われながら、境内を歩き始めた。
すると突然、空気が変わり、神社の中から響くような声が聞こえた。
「ここに来たる者、叶えし呪いの言葉を持てよ。」
声の主は見えなかったが、彼らは恐れを抱えつつも興味に引き寄せられる。
友人たちも不安を感じ始め、後ずさりしようとしたが、健太はその場に踏みとどまった。
「俺は、呪いなんて信じない!」と叫ぶと、呪いの言葉を発した。
その瞬間、彼の目の前に光が閃いた。
彼はその砂のような光の中で、周囲が逆さまに揺らぐのを感じた。
「どうなってしまったんだ……!?」
そして、彼のまわりの風景が劇的に変わり始めた。
地面は空に、空は地面に、何もかもが逆さまになっていく。
友達は、急に天井に引き寄せられるように浮かび上がり、彼自身も二重の世界に取り込まれてしまった。
「助けて!」友達たちは恐怖に声を上げた。
しかし、健太はその無力感にただ立ち尽くしていた。
彼の中で、逆転して行く世界と、彼の心の中の不安が戦っていた。
やがて、逆転する現象は彼らに厳しい現実を突きつけた,即座に暗い気持ちが押し寄せてくる。
これが、彼らの欲望に対する警告だと悟った。
「もしかしたら、これは俺たちが欲した好奇心の代償なのかも……」と、健太は思った。
彼はその時、自分に与えられた道を選択する覚悟を決めた。
恐れに屈することなく、逆転した世界での真実に向かう決意をしたのだ。
その瞬間、健太は心の中で「戻りたい」と叫び、呪いの世界に抗った。
彼の心の中の「戻りたい」という思いが強まると、眩しい光が彼らを包み込み、再び現実の世界に戻った。
息をつき、周囲を見回すと、彼らは無事に逆神社の境内に立っていた。
自然に戻った日常が広がる中、彼らの心に余韻が残った。
健太は周りの友達を見渡し、彼らに向かって言った。
「あの神社についての話は、もう信じない。今度は慎重に行動しよう。」
その日以来、健太たちは逆神社の恐ろしさを忘れず、決して近づくことはなかった。
村の言い伝えは彼らの心に刻まれ、それは彼らにとっての教訓となったのだ。